ES細胞からSFEB法の変法を用いて分化誘導したグルタミン酸作動性神経を用いて、qRT-PCRにて各種イオンチャネルおよびその関連因子の遺伝子発現の変化の有無を調べた。いずれの因子においてもその発現変化は認められなかった。 前年度までの動物モデルを用いた実験において、肺組織の病理学的検討、生体での誤嚥評価でMeCP2欠損マウスでは右前葉に限局した誤嚥性肺炎を生じることを明らかにしており、今年度は引き続いて、その原因検索を中心に研究を行った。肺胞壁間距離の解析で、MeCP2欠損マウスでは肺胞腔の拡大が見られた。Ⅰ型/Ⅱ型肺胞上皮細胞の比率解析を行い、ABCA3陽性のサーファクタントを産生するⅡ型肺胞上皮細胞の減少が見られた。肺組織の肺特異的マーカー遺伝子ならびに、サイトカインや細胞表面抗原などの炎症に関連した遺伝子の発現をRT-PCRで確認し、肺胞サーファクタントの遺伝子発現が低下を確認した。 脳幹組織を用いた嚥下関連神経回路の評価でMeCP欠損マウスの脳幹ではグルタミン酸作動性神経マーカー、コリン作動性神経マーカー、ドパミン作動性神経マーカー、サブスタンスPなどのいずれも発現が低下しており、脳幹神経回路の機能不全が示唆された。さらに脳幹免疫染色で、脳幹嚥下中枢を構成する孤束核、最後野、迷走神経背側核にて、サブスタンスPの発現が低下していた。 サブスタンスPは嚥下反射、咳嗽反射の形成における主要な神経伝達物質であり、その発現低下から、嚥下中枢の機能不全を引き起こし、誤嚥性肺炎を来たしていると考えられた。 RTTモデルマウスにおいては、肺組織の成熟障害のみならず、脳幹における神経伝達物質放出の異常異常が誤嚥性肺炎を惹起している可能性が示唆された。
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