研究課題/領域番号 |
15K19652
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩谷 壮太 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00741430)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | UnaG / bilirubin / fluorescent |
研究実績の概要 |
核黄疸の原因は非抱合型ビリルビン(iDB)の神経毒性である。これまでiDBは、酵素法や酸化法による総ビリルビン(TB)値と抱合型ビリルビン(DB)の差より算出しており、直接測定法は存在しなかった。2013年にニホンウナギの筋肉に存在する緑色蛍光タンパク質(UnaG)がiDBに特異的に結合し蛍光を獲得することが発見された。本研究では、このUnaGを用いて新生児血清中iDBを直接測定する方法を確立することを目的とした。 ビリルビン標準液(アローズ社)、倫理委員会の承認および家族の同意のもと得られた新生児余剰血清検体を実験に用いた。200倍希釈した検体50μLに対してUnaG(理化学研究所より提供)を加え、総容量200uLの混合溶液を作成した(最終UnaG濃度2μM)。コロナ社製のマイクロプレートリーダー(SH9000)を用いて、励起波長498nmに対する蛍光波長527nmの蛍光強度を測定した。ビリルビン標準液におけるiDB値と上記方法で得られた蛍光強度から標準線を作成し、各血清における蛍光強度からiDB値を算出した(UnaG法)。現在臨床検査で用いられている酵素法(イアトロLQ T-Bil/D-Bil、三菱化学メディエンス)で測定したiDB値とUnaG法で得られたiDB値との相関性を検討した。また、光線療法、DBの影響につき調べた。 新生児92例から採取した余剰血清140検体(採取日齢 中央値 5日、iDB 中央値 12.1 mg/dL、光線療法中35検体を含む)を解析した。酵素法とUnaG法によるiDB値は極めて良好な相関を示した(R=0.943, P<0.001)。光線療法の有無による差はなかった(R=0.949 vs. 0.938)。高DB血症(DB≧1.0mg/dL)の14検体では、酵素法とUnaG法によるiDB値はほぼ同値であった。 UnaGを用いて新生児血清中iDB測定法を確立した。本方法では、光線療法や高DB血症の有無に関わらず、直接的にiDB値を測定可能である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UnaGを用いたiDB測定方法を確立し、研究内容について3度にわたり学会発表を行い、現在は論文投稿中である。また、新たなiDBのなかでも特に神経毒性の要因とされるアルブミン非結合型のアンバウンドビリルビン(UB)測定に関する研究についても、実験が順調に進行中であり、この測定法については特許申請中である。また、すでに学会発表を予定しており、今年度中には論文発表を計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
iDBのなかでもアルブミン非結合型のアンバウンドビリルビン(UB)が神経毒性の主要因とされる。臨床現場においてはグルコースオキシダーゼ・ペルオキシダーゼ(GOD-POD)法を用いたUBアナライザー(アローズ社)が唯一使用されている状況にあるが、高DB血症の際に正確な測定ができず、しばしば混乱が生じている。本研究で確立したUnaG法では高DB血症の有無に関わらず、直接的にiDBを測定できることから、このUnaGとGOD-POD法を組み合わせた新たなUB測定法を開発したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
iDB測定系の実験については予定どおり1年目に遂行できた。一方、UB測定については2年目内に実験を遂行しきれず、次年度に一部追加実験を残している状態である。このような事情で一部残余金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
追加実験用の試薬、消耗品の経費として使用予定である。
|