晩期循環不全(late onset circulatory collapse 以下LCC)は、急性期を離脱した早産児が感染や動脈管開存等の背景なく突然の血圧低下、乏尿をきたしてショックとなる疾患です。LCCは28週未満の超早産児で多く報告されており、経験的にはステロイド投与で改善することが知られています。重篤な合併症として脳室周囲白質軟化症が報告されています。本疾患の背景には相対的な副腎不全があると報告されており、循環動態の解析では血管拡張に伴う血圧の低下が起こっており、臓器血流の不均衡が起こることが明らかになっています。一酸化窒素(Nitric oxide:NO)は血管拡張作用を有しており、生成後に循環系に入ると速やかに参加されてNO代謝産物(NOx)となります。NOxを測定することで全身で内因性に産生されたNOを評価することが可能です。内因性のNOがステロイドと拮抗していることを示す報告が複数なされており、LCCの背景には相対的な副腎不全があること、LCCの病態に血管拡張が影響していることから我々はLCC発症時に内因性のNO産生が増加している可能性が高いと考えました。以上から本研究を企画し平成27年度から症例の登録を開始しました。平成28年度は28週未満の症例14例を登録し、NOxの計測を10例で行ないました。LCC発症例は現在1例のみであり、NO代謝産物はLCC発症時に有意に上昇していないという結果でした。今後も症例を蓄積することが必要です。
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