研究実績の概要 |
水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid; BP)は、高齢者に好発して全身に水疱やびらんを呈する自己免疫性表皮下水疱症である。BP患者の血中自己抗体は、表皮基底膜タンパクである17型コラーゲン(COL17)を認識する。培養表皮細胞にBP患者血清あるいは、COL17内のNC16A領域に位置するエピトープに対する抗COL17抗体を投与すると、COL17の量が減少することが知られている(Iwata H et al., J Invest Dermatol 2009; Natsuga K et al., J Immunol 2012)。BP患者自己抗体投与によるCOL17の減少のメカニズムを明らかにするために、網羅的に培養細胞の遺伝子発現を解析することを計画した。本年度は、BP患者由来IgGと正常人由来IgGをそれぞれ培養表皮細胞に投与し、培養細胞中の転写産物をマイクロアレイを用いて解析した。マイクロアレイによる解析の結果、複数のケモカインやプロテアーゼ、細胞内輸送タンパクの遺伝子発現が、BP患者由来IgG投与群で上昇していることがわかった。このうち数十種類の遺伝子について、定量PCR法でマイクロアレイのデータが再現されるか、解析を行っている。また、類縁疾患である天疱瘡では、自己抗体の培養表皮細胞への投与によってp38-MAPK径路の活性化が引き起こされることが知られており、BP患者自己抗体でもこの現象がみられるか解析した。結果として、BP患者自己抗体の培養表皮細胞への投与は、p38-MAPK径路の活性化に寄与しなかった。
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