研究課題/領域番号 |
15K19670
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
赤坂 英二郎 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (30436034)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表皮水疱症 / 栄養障害型 / 痒疹型 / VII型コラーゲン / COL7A1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,DEBの原因遺伝子であるCOL7A1変異を詳細に解析することにより,DEBの未知の発症メカニズムを解明することである. これまで解析したDDEB 65家系,RDEB 90家系についてCOL7A1変異の遺伝子型と表現型の解析を行った.DDEBの変異分布,DDEB-prの特徴的な変異の分布や変異のタイプ,RDEBにおける重症の表現型を呈する変異のタイプなど,いくつかの新しい知見が得られた.しかし遺伝子型と表現型の相関については,いまだ不明な点が多い.またRDEBについては一方のアリルにしか変異が同定されない患者を20例蓄積し,次世代シークエンス用にゲノムDNAを精製した. これらの結果は,多くの学会や論文で報告することができた.またこれらの内容とは直接関連はないが,これらの考えや技術を用いて,他の多くの遺伝性皮膚疾患についても,学会発表や論文で新規知見を報告している. 今後は次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析による遺伝子変異検索を行なう.これまで集積したDEB家系において,COL7A1以外にDEBの発症や重症度に関与する遺伝的要素を検索する.また新規遺伝子が同定できた際には,DEBの発症に関与するか検討する.すなわち新規病因遺伝子を培養細胞に形質導入し,VII型コラーゲンの産生,分泌などにつき検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 各DEB症例の遺伝子型と表現型についての検討:DEBは優性型のDDEB,劣性型のRDEBに大別され,さらに臨床像によりいくつかの亜型に分類される.これまで,当科でCOL7A1変異を同定したDDEB65家系,RDEB90家系について,それぞれの亜型ごとに遺伝子型を比較し,亜型特有の変異があるか,遺伝子変異の分布に特徴はあるか,遺伝子型による重症度の違があるかについての検討をおこなった.DDEBではCOL7A1変異はすべてコラーゲン領域で同定された.DDEB-prではエクソン/イントロン85-87のスプライシング異常で発症することが多かった.RDEBでは,COL7A1変異は遺伝子全体に分布しており,重症型では両アリルに早期停止コドンとなる変異を有している傾向がある.また一部の症例では,一方の変異が同じであれば,もう一方の変異がよりN末端側にある方が重症の表現型を呈していた. 2) DDEBにおいて家族内あるいは家族間の重症度の違いについての検討:G2251E変異を有する2家系では,同一家系内において表現型や重症度が異なっていた. 3) RDEBにおいてCOL7A1変異が一方のアリルにしか同定されない患者を集積:一方のアリルにRDEB特有のCOL7A1変異を有し,臨床的にも明らかにRDEBであるが,もう一方のアリルにCOL7A1変異を検出しえない患者20例を集積した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析による遺伝子変異検索を行なう.DDEBについては,同一家系内で表現型が異なる家系において,重症の表現型を呈する患者のみで変異があり,軽症または皮膚症状を有さない患者では変異がない遺伝子を同定する.RDEBについては,明らかにRDEBであるが,一方のアリルにしか変異が同定されない症例について,まずCOL7A1変異の有無につき検討する.次にCOL7A1以外の遺伝子について,それらの症例で共通して変異を有する遺伝子を検索する. COL7A1以外の候補遺伝子が見つかった場合には,他のDEB家系や健常者において,変異の有無につき従来のsanger sequenceにて検討する.そして同定した新規遺伝子がDEBの発症に関与するかについて,新規遺伝子に変異を有するベクター,COL7A1変異を有するベクターを作成し,これらのベクターを培養ヒト角化細胞に形質導入する.新規遺伝子変異細胞株,COL7A1変異細胞株,新規遺伝子変異+COL7A1変異細胞株を樹立し,各々について細胞の形態,VII型コラーゲンの発現および分泌量につき,免疫染色,免疫蛍光,RT-PCR,ウェスタンブロットで解析を行う.
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