Atypical Werner 症候群の原因遺伝子変異であるラミンA 遺伝子変異による光老化(UV 照射による細胞へのダメージ)への影響を検討した。UVA 照射によって誘導されるアポトーシス数はラミンA 遺伝子変異を有する患者由来細胞で亢進した。また、患者由来細胞では、UVA照射によるROS産生が健常由来細胞より増加していたため、Atypical Werner 症候群由来線維芽細胞はUVA 照射によるダメージ(アポトーシス)を受けやすい可能性が示唆された。光老化だけではなく、自然老化(加齢による皮膚老化)におけるラミンA 遺伝子変異の影響を調べるために過酸化水素水刺激を用いた、酸化ストレスに対する細胞へのダメージ(アポトーシス)についてもFACS による検討を行った。その結果、過酸化水素水刺激によって誘導されるアポトーシス数は患者由来細胞で亢進した。また、患者由来細胞では、過酸化水素水刺激によるROS産生が健常由来細胞より増加していた。これらの結果より、Atypical Werner 症候群由来線維芽細胞は酸化ストレスによるダメージ(アポトーシス)を受けやすい可能性が示唆された。Atypical Werner 症候群のラミン遺伝子変異を持つ細胞と正常細胞を用いて、紫外線、酸化ストレスによる細胞のダメージがファルネシル転移酵素阻害薬によって改善されるのかどうかを検討した。しかし、紫外線、酸化ストレスによるラミン遺伝子変異を持つ細胞へのダメージがファルネシル転移酵素阻害薬によって、さらに亢進するという結果になった。この結果より、ファルネシル転移酵素阻害薬は、Atypical Werner 症候群の光老化及び生理的老化に対して有効な効果が得られない可能性が示唆された。
|