1. siRNAによるTCHHL1蛋白質の抑制が表皮角化細胞(NHK)に及ぼす影響の検討:これまでの実験結果からsiRNA によりTCHHL1の発現を抑制させたNHKは増殖が抑制され、その機序として、ERK1/2、JNK、Aktのリン酸化の抑制が関与していた。さらにTCHHL1蛋白質の発現抑制による遺伝子発現の変化を網羅的に解析するためTCHHL1抑制NHKを用いてmicroarrayを行ったところ、ERK1/2、JNKの発現の減少とその下流に存在するTP53、NFkB、HIF1Aなどの多くの分子の発現が低下していた。一方、Aktの発現量の変化はみられなかったため、real time PCRによりAktの下流に存在しアポトーシスを促進するFOXO1、BCL2、Bimの発現を検討したところ、いずれの発現も亢進していた。さらにNHKの増殖や分化において重要な転写因子であるKLF4との関連も検討したところ、TCHHL1がKLF4の標的分子である可能性が示唆された。 2.各種皮膚疾患の病態形成におけるTCHHL1蛋白質の関与の検討:各種皮膚疾患におけるTCHHL1蛋白質の発現を免疫組織染色により検討したところ、乾癬や扁平苔癬、日光角化症、有棘細胞癌(SCC)、基底細胞癌などの増殖が亢進している部位でTCHHL1の発現が観察された。さらに有棘細胞癌の増殖におけるTCHHL1の関与を皮膚SCCの培養細胞株であるHSC1細胞を用いて検討した。その結果HSC1細胞でもTCHHL1の発現抑制により増殖が抑制され、TUNEL陽性細胞が増加した。さらにHSC1細胞における抑制機序を検討したところ、ERK1/2のリン酸化が抑制されていた。以上よりTCHHL1がSCCの治療ターゲットになる可能性が示唆された。
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