研究課題/領域番号 |
15K19682
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小川 陽一 山梨大学, 総合研究部, 助教 (20377542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共刺激分子 / ICOS / Vg4陽性gdT細胞 / 制御性T細胞 / 接触性皮膚炎 / 乾癬 |
研究実績の概要 |
TregやVg4+gdT cellsといったeffector T cellsに高発現しているICOSの機能を検討するため、まず接触性皮膚炎感作物質であるDNFBを用いた接触性皮膚炎モデル (Th1モデル)を用いた。感作相・惹起相のそれぞれにブロッキング抗体である抗ICOS ligand (ICOSL)抗体を腹腔内投与し耳介腫脹を経時的に観察した。惹起相ではcontrol IgG投与群と有意差はなかったが、感作相に抗ICOSL抗体を投与すると有意に耳介腫脹を増強した。control IgGあるいは抗ICOSL抗体を投与後、DNFBで感作したマウスの皮膚所属リンパ節細胞をvitroにおいてDNBSで刺激すると、抗ICOSL抗体投与群ではELISAで有意にIFNg産生量が増加していた。 次にImquimod cream (IMQ)外用で誘導される乾癬モデル (Th17モデル)を用いた。抗ICOSL抗体投与群はcontrol IgG投与群に比較して、有意にIMQ外用が惹起する炎症による体重減少が少なかった。また、紅斑・鱗屑・皮膚腫脹といった乾癬の臨床症状も有意に軽減されていた。抗ICOSL抗体投与がTreg cells、Vg4+gdT cellsどちらのICOSL-ICOSシグナルを抑制することにより乾癬様症状を軽減しているか検討するため、Treg cells除去抗体であるanti-mouse FR4 mAbを尾静脈より投与した。Treg cells除去後のマウスにIMQを外用したところ、control IgG、抗ICOSL抗体投与群双方で乾癬様症状は増悪したが、抗ICOSL抗体投与群で症状は軽減されていた。このことは、抗ICOSL抗体投与による乾癬様症状は軽減はTreg cells上のICOSLを阻害することで誘導されているのではなく、おそらく主要なIL-17関連サイトカイン産生細胞であるVg4+gdT cells上のICOSLを阻害することで誘導されていると考える。現在、マウスリンパ節・脾臓よりVg4+gdT cellsを単離し、in vitroでIMQを添加しIL-17関連サイトカインを測定する系にcontrol IgGあるいは抗ICOSL抗体を加え、サイトカイン産生が抗ICOSL抗体添加群で減少するか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はTh1, Th2, Th17反応においてICOSL-ICOSシグナル阻害がどのような効果を示すかを検討することが目標であった。抗ICOSL抗体投与によりimiquimod誘導乾癬モデル (Th17反応)が有意に軽減されたことは新しい知見である。現在、Th2反応におけるICOSL-ICOSシグナル阻害の効果の検討ができていないが、近日中に施行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
抗ICOSL抗体投与によりimiquimod誘導乾癬モデル (Th17反応)が有意に軽減される、という知見を得たので、今後免疫不全マウスにヒト臍帯血CD34陽性細胞を移植しヒト化したマウスにヒトから得られた乾癬病変を移植し、得られた知見を確認する予定である。ヒト化マウスにおいても同様の知見が得られれば臨床応用に結びつく可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
比較的安価な消耗品 (抗体、薬剤、試薬)で研究が遂行できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、in vitroの実験においてELISA kitを頻用するため支出が増加すると思われる。 また免疫不全マウスの購入に研究費が必要となる。
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