①MART-1免疫染色を用いた陽性細胞の割合の算出 初年度に行った研究結果より、原発巣の腫瘍細胞は、BRAF変異細胞とBRAF変異のない細胞が比較的均一に混ざり合っている可能性が考えられた。個々の症例における変異の割合の差は、Laser microdissectionで炎症細胞や間質細胞が少ない部位を部分的に切り取った病変部であるため、腫瘍細胞以外の要素に依存する可能性は低い。それを明らかにするため、MART-1免疫染色後の陽性細胞の割合を算出した。11症例のそれぞれ2~3部位のMART-1陽性細胞の割合の中央値は92.9と高値であり、メラノーマ細胞以外の細胞の混入は微量でBRAF変異割合に大きな影響は与えないことが示された。 ②転移病巣についての検討 11例のメラノーマのうち、転移巣の切除術を受けた症例が9例あり、9例のSanger法によるdirect sequencingでは3例でBRAF変異を認めなかった。前年度に行ったddPCRを用いた変異割合の解析で、これら3例は1.30%、0.19%、0.02%とごくわずかにBRAF V600E変異を含んでいた。BRAFV600E変異特異的抗体であるVE1を用いた免疫染色で11例のメラノーマ原発巣で陽性であることを確認後、原発巣と転移巣のBRAF変異率が大きく異なった3例について、転移巣のVE1免疫染色を行った。3例中1例の転移巣はddPCR結果と同様にVE1陰性だったが、2例はddPCRでの変異率がごくわずかにも関わらず陽性に染色された。この結果は免疫染色とddPCRによる評価の不一致を示した。
|