皮膚リンパ腫におけるガングリオシドの関与を検討するため、腫瘍増殖に関与するガングリオシドであるGD3を標的として解析した。GD3への転換酵素であるGD3 synthaseの抑制が報告されているTriptolideを2種類のリンパ腫細胞株で再度in vitroで投与し、1種類の細胞株で細胞死を確認したが、コントロール群と比較して抗腫瘍効果は10%未満の増加しかなかった。 そこで、当院リンパ腫専門外来へ皮膚リンパ腫で代表的な菌状息肉症患者を集めてデータベース化し、その中から同意を得たstage IIB患者の皮膚腫瘍を切除し、ガングリオシドのFACS解析を行った。回収した腫瘍細胞から死細胞を除去し、CD7-CD3+CD4+CD8-CD45RO+細胞におけるGD3の発現量を測定した結果、正常人と比較して腫瘍細胞で有意にGD3が増加していた。また、CD7陽性細胞から同様のCD3+CD4+CD8-CD45RO+分画と比較すると、CD7陰性細胞においてGD3発現量が有意に増加していた。菌状息肉症ではCD7陰性例が多いことから、ガングリオシドの増加とCD7欠損の関係が腫瘍増殖に関与する可能性が示唆された。また、組織サンプルを使って実際のアミノ酸解析を行う予定であったが、皮膚へ浸潤した腫瘍部位のみを回収するサンプル調整が困難であったことと、他施設の専門家との都合も合わなかったため研究期間中には行えなかった。皮膚リンパ腫細胞でのガングリオシドの役割はさらなる解析が必要と考えられた。
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