ホスホリパーゼCε(PLCε)を皮膚keratinocyteで特異的に強発現するトランスジェニックマウス(TG)を作成したところ、同マウスの皮膚には鱗屑、表皮肥厚、不全角化、好中球の表皮内浸潤など尋常性乾癬に類似した臨床的・組織学的変化が生じていることおよび皮膚浸潤細胞におけるサイトカイン発現などの免疫学的側面もほぼヒトの尋常性乾癬に類似すること、さらにヒトの尋常性乾癬でみられる活性型STAT3発現もこのマウスの皮膚で起こっていることを見いだした。 K5-PLCε-TGマウス皮膚に紫外線を照射すると野生型マウスに比べ著明な好中球浸潤と表皮肥厚がみられ、さらに紫外線発癌実験を行ったところ、K5-PLCε-TGマウスは野生型マウスに比べて紫外線発癌が生じやすかった。その理由としてK5-PLCε-TGマウス皮膚で過剰発現しているSTAT3により紫外線によるアポトーシスが起こりにくく遺伝子損傷を持った細胞が生き残りやすいためと考えられた。 In vitro でPLCεがプロテインキナーゼCのμ分子種(PKCμ)を活性化させることを確認した後、PKCμを皮膚keratinocyte特異的に強発現するトランスジェニックマウスを作成したが、同マウスの皮膚には尋常性乾癬に類似した変化が生じなかった。これらの結果から、keratinocyteでのPLCε過剰発現は尋常性乾癬様の皮膚変化を起こすが、この時PLCεの作用はPKCμを介さないと考えられた。
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