研究課題/領域番号 |
15K19690
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中野 英司 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80734970)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 色素性乾皮症 / DNA修復 / 遺伝子型 / 表現型 / 診断 |
研究実績の概要 |
色素性乾皮症(Xeroderma Pigmentosum; XP)は、著明な光線過敏症状、日光暴露部に若年から発がんを認めることが特徴的な常染色体劣性遺伝性疾患であり、DNA修復機構に関わる遺伝子の変異によって引き起こされる。XPは8つの病型(A~G群とバリアント型)に分類され、病型によっては不可逆性、進行性の神経症状を呈するが、その詳しい機序は不明である。日本では光線過敏症状、神経症状ともに重症であるA群が最も多く、適切な遮光を行わないと10歳前後より皮膚がんが多発してくる。診断を確実なものにすることによって、患者本人や保護者の遮光への意欲が高まり、発がんを予防できることにつながるため、診断の迅速化は臨床的に重要である。従来使用されてきた、紫外線照射後の不定期DNA合成能を用いたDNA修復能検査では、手技に熟練を要し、時間がかかることと細胞周期ごとの修復能が評価できないこと等から、診断に時間を要していた。我々はフローサイトメトリーを用いた新たなDNA修復機能検査を確立することにより、XPの診断を迅速化することができた。 また、日本における創始者変異をもつ重症A群患者と、軽症のA群患者からそれぞれ線維芽細胞を樹立し、DNA修復能や蛋白発現の違いを検証した。軽症型のA群患者は、光線過敏があるものの発がんは無く、神経症状も認めず、健常コントロールよりは短いもののXPA蛋白の発現を認めた。また、軽症型では細胞周期に関わらず、DNA修復能が残存していることが示され、変異したXPA蛋白にも機能が残存していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローサイトメトリーを用いたDNA修復能検査については、線維芽細胞を用いた手法は確立できた。また、この方法では、従来広く用いられてきた紫外線照射後の不定期DNA合成能と強い相関を持つことが分かり、代替の検査となると考えられた。以上より、診断の迅速化が達成できたと思われる。また、バリアント型については従来の方法では正常コントロールとDNA修復能がほとんど変わらないとされていたが、フローサイトメトリーを用いた細胞周期ごとの解析ではS期のみDNA修復が低下することが知られている。日本ではバリアント型には創始者変異が報告されており、他の相補性群では遺伝子型と表現型の相関も認めているため、バリアント型の複数の遺伝子型で検討した。結果、遺伝子型に関わらず、S期のDNA修復が低下していることが分かった。このことから、バリアント型における診断も迅速化することが可能となった。 A群患者では遺伝子型と表現型の相関が分かっており、重症の患者と軽症の患者で蛋白の発現やDNA修復能などを調べた。軽症型のXPAでは変異蛋白が発現しており、ある程度の機能を有していることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
診断の迅速化が可能となったため、今後、実臨床においてその有効性を検討していく。また、これまでの患者においても引き続き従来の方法との比較を行い、検査の妥当性などを調べていく。また、血液サンプルについても同様の手法が可能かを検証する。 XPAの軽症化の機序として、変異蛋白の機能を解析する。具体的に変異蛋白と相互作用を有する蛋白などを同定していき、治療のターゲットとなりえるか検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究においては細胞培養の器具や抗体など、使用頻度が高い物品を定期的に使用する必要がある。物品購入が少なめであったが、次年度は培養する細胞の種類が増え、また実際の臨床の場における診断にも使用することも想定しており、培養器具、抗体などの使用頻度も増えると考えられる。当該年度分と翌年度分を合わせた額を使用すると思われる。旅費に関しては参加する学会が増えるため、使用額も増える予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入、旅費などの使用額は当該年度分よりさらに増加すると考えられる。また、免疫沈降や蛋白の検出など、実験に使用する器具、薬品の量も増えるため、これらの使用額が必要である。
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