研究課題
今回われわれは、トリプトライドが多発性骨髄腫や神経芽細胞腫、そして膵臓がんに対して腫瘍の増殖能を低下させることに着目して、メラノーマに対しても同様に、トリプトライドが腫瘍の増殖能を抑制する効果を持つのではないかと考えた。ヒトメラノーマ細胞株であるHMV-Ⅰ、HT-144にトリプトライドを作用させたところ、濃度依存性に熱ショック転写因子(Heat shock factor 1:HSF1)のタンパク質発言を低下させることを発見した。トリプトライドを作用させたヒトメラノーマ細胞株では増殖能が低下し、wound healing assay、migration assayで遊走能が、invasion assayでは浸潤能が低下することを確認した。同様の結果がin vivoにおいても再現されるか確認するために、ヒトメラノーマ細胞株であるHMV-Ⅰをヌードマウスに移植し、実験をおこなった。腫瘍細胞移植後1週間後より、コントロールであるDMSOとトリプトライドをそれぞれ2週間毎日腹腔内に投与した。トリプトライドを投与したマウスでは、DMSOと比較して腫瘍の体積が5分の1、重さが7分の1であり、抗腫瘍効果を認めた。トリプトライド群とDMSO群のマウスに体重が差がなかったことから、明らかに腫瘍の増加に有意差があると考えられた。摘出した腫瘍をwestern blotしたところ、DMSO群と比較して、トリプトライド群ではHSF1のタンパク質発現レベルが低下していた。これらの実験結果から、トリプトライドはHSF1の発現レベルを低下させ、抗腫瘍効果を示すことが示唆された。トリプトライドを利用した新規のメラノーマ治療の開発が期待される。
2: おおむね順調に進展している
メラノーマの増殖、浸潤、転移におけるHSF1のターゲット遺伝子の同定と機能解析を行いながら、同時に直接HSF1に作用するトリプトライドを発見し、その抗腫瘍効果をin vitro、in vivoの実験にて確認し、その研究成果を学会にて発表した。
メラノーマの増殖、浸潤、転移におけるHSF1のターゲット遺伝子の同定と機能解析を進め、メラノーマの標本を用いたHSF1の免疫染色を行い、HSF1がメラノーマの進行、予後に関わっているかを明らかにする。
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