研究課題
肥厚性瘢痕・ケロイドでは病変部に細胞外マトリックスの過剰沈着が認められる。本研究ではエピジェネティクスの代表分子であるhistone deacetylase (HDAC)に着目した。以前、HDAC阻害剤としてTrichostatin A(TSA)を選択し、in vitroでケロイド細胞と正常皮膚線維芽細胞における影響を検討した。その結果TSAの投与によりCOL1A2やVersicanの低下がみられた。また、マイクロアレイを行い、様々な解析を行ったところ、CREBBP/p300やHIF1α, IGF-1などが変動することが示唆された。今回、ケロイド細胞と正常線維芽細胞を4サンプルずつin vitroで培養し、TSAを投与後にRNAを回収、その後RT-PCRで解析することとした。まずCREBBP/p300の発現をRT-PCRで確認したが、ケロイド細胞、正常線維芽細胞いずれもTSA投与前後で差はみられなかった。一方、HIF1-αはTSAの投与前後で遺伝子発現の低下をみとめ、IGF-1は総じてTSA投与前後で遺伝子発現が増加することを見出した。だが、上記のなかでケロイド細胞に特異的な遺伝子変動はみられなかった。次に、HDAC阻害剤として、Suberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)に注目し、COL1A2やVersicanの変動を検討した。だがSAHA投与前後では発現の程度に有意な変動はみられなかった。一方で、HDAC各種の遺伝子発現について正常線維芽細胞とケロイド細胞の遺伝子発現を詳細に検討した所、HDAC2がケロイドで特異的に発現が増強していることを見出した。今後はHDAC2をより選択的に阻害するHDAC阻害剤を検討し、COL1A2やVersicanなどの細胞外マトリックスやHIF1α、IGF-1などの転写因子に及ぼす影響を検討する。
3: やや遅れている
HDAC阻害剤の選択ならびに遺伝子発現の解析に時間を要したため。
1.H28年度は、HDAC2選択的なHDAC阻害剤を選択しながら、以前TSAで変動が大きかった遺伝子のmRNA発現を詳細に検討する。またWestern blot法などで蛋白レベルでの変動を確認する。また、候補遺伝子の特異抗体を購入し、免疫染色を行いin vivoでの発現の有無を検討する。2.HIF1-αやIGF-1などTSA投与により大きく変動した転写因子の遺伝子の機能を解析する。候補遺伝子のsiRNA作成による発現抑制、もしくは遺伝子発現増強を行い、細胞外マトリックスや線維化に関与する因子の発現の変化を評価する。3.Ex vivoケロイドモデルマウスを用い、HDAC阻害剤の濃度を振り、連日3-4日間局所に投与する。その後マウスの皮下に埋め込んだケロイド組織を経時的に採取し、膠原線維や細胞外マトリックスの発現を免疫染色で検討し、mRNAの発現もRT-PCR法で評価する。
ケロイド特異的に発現している候補分子の再現性の確認、特異的な遺伝子の発現を検討するため、プライマー、プローブのデザイン、siRNAの作成や導入、マウスの維持費などが必要となる。
H28年度もRT-PCRを複数回行い、ケロイド特異的に発現している候補分子の再現性を確認する(50万円)。ケロイド特異的な遺伝子の発現を検討するため、プライマー、プローブのデザインが必要である(35万円)。次に、siRNAの作成や導入などに費用を要する(85万円)。また、Ex vivoモデルマウスの維持費として50万程度が必要である。
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