研究課題/領域番号 |
15K19697
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
矢野 博之 大分大学, 全学研究推進機構, 教務職員 (50448552)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線誘発線維症 / 細胞外マトリックス / コラーゲン / microRNA |
研究実績の概要 |
我々は、放射線誘発線維症に関連する遺伝子発現メカニズムを解析することを研究目的とし、これまでに、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンについて、放射線により発現が増加し、その発現増加にTGF-β/Smadシグナル伝達が関与することを見出してきた。本研究においては、転写後の遺伝子発現を調整すると考えられるmiRNAを対象とし、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与するmiRNAについて検討した。 その結果、miRNA マイクロアレイ、real-time PCRの結果より、多種あるmiRNAの中でmiR-29が、放射線により発現が減少することがわかった。また、miR-29過剰発現及びCRISPRシステムを用いたノックダウン実験の結果より、miR-29が放射線によるI型コラーゲン発現増加に影響を与えることがわかった。 さらに、放射線によるmiR-29発現減少に関わるシグナル伝達経路を調べるために、TGF-β/Smadシグナル経路を阻害した場合のmiR-29発現変化をreal-time PCRにより測定した結果、放射線によるmiR-29発現減少が、TGF-β/Smadシグナル伝達経路の阻害より緩和された。そして、放射線によるmiR-29の転写調節機構について調べるために、miR-29をコードする遺伝子のプロモーター活性の変化をルシフェラーゼアッセイにより測定した結果、転写開始点から下流の+639から+865までの領域でルシフェラーゼ活性が増加し、また、同+1,030から+1,492までの領域では、ルシフェラーゼ活性が減少した。これらの結果より、放射線によるmiR-29の発現減少にはTGF-β/Smadシグナル伝達経路が関与し、さらにmiR-29の転写調節機構について、正および負の転写調節を行う領域が存在し、これらの領域がmiR-29の転写調節機構に重要であることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線誘発線維症への関与が考えられるmiR-29について、その選択的プロモーターの解析は順調に進んでおり、現在、過剰発現及びノックダウン実験等の機能解析を進めている。また、このmiR-29の転写調節機構へのTGF-β/Smadシグナル伝達の関与とそのクロストークの有無について検討するために、現在、コンストラクトの作製も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きmiR-29のプロモーター解析を続け、そのプロモーター活性に関わる転写因子の同定を試みる。また、個体レベルでの機能を明らかにするためにも、CRISPRシステムを用いて、miRNAノックアウトマウスの作製も試み、生体内レベルでの転写調節機構の証明、放射線誘発線維症に関わるmiRNAの機能解析を行い、医療への応用を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、様々なサイトカインにおける放射線によるmiRNAの発現変化について、解析する予定であったが、サイトカインの一つであるTGF-βに関する解析の結果、その下流因子であるSmad3が重要な因子であることが示唆されたため、計画を変更し、このTGF-β/Smad3の解析を行うことと優先としたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、他のサイトカインにおけるmiRNAの解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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