研究課題/領域番号 |
15K19704
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
福田 桂太郎 帝京大学, 医学部, 助教 (60464848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペリオスチン / メラノーマ / 創傷部転移 / 前転移ニッチ |
研究実績の概要 |
微小環境におけるペリオスチン(POSTN)、I型コラーゲン(COL-I)、フィブロネクチン(FN)がメラノーマ細胞に与える影響を調べるため、POSTNやCOL-I、FNを底面に付着させたプレートにB16-BL6(マウスメラノーマ細胞株)またはMeWo(ヒトメラノーマ細胞株)を反応させ、細胞接着アッセイ、細胞遊走アッセイ、scratch wound healingアッセイ、細胞増殖アッセイを行った。その結果、POSTNは増殖には影響を与えず、COL-I、FNよりも有意にメラノーマ細胞の接着能を低下させ、遊走能を上昇させる働きがあることがわかった。 この結果を受け、我々が作製した傷を付けた部位にメラノーマの転移が誘導されるメラノーマ創傷転移モデルで、POSTNが血液中を循環するメラノーマを引きつける力があるか調べた。POSTNを大量に産生・分泌することが知られているマウス骨芽細胞株MC3T3-E1にshRNAを導入し、POSTNを大量に作る骨芽細胞と少量しか作らない骨芽細胞を作製した。そしてこれらの骨芽細胞と分泌されたPOSTNを含む培養液をゲルに混ぜ、傷をつける代わりに、マウスメラノーマ細胞株の足底への移植した後、大腿皮下に投与し、皮下転移が形成されるか観察した。その結果、POSTNを大量に作る骨芽細胞を投与したマウスでは、7匹中7匹で、投与部位に皮下転移巣の形成を認め、ヒト同様、転移巣周囲の組織にPOSTNの強い発現を認めた。POSTNの産生量が少ない骨芽細胞を投与したマウスでは7匹中1匹でしか、皮下転移巣の形成を認めなかった。POSTNは、メラノーマの創傷部への転移を誘引する重要な分子として働き、転移巣を創傷部に形成させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
創傷部転移における微小環境のPOSTNは、メラノーマ細胞の転移を誘引する分子として機能することをin vivoで示し、メラノーマにおける創傷部転移の分子病態を解明することが出来た。その後、我々はPOSTNの産生を抑制する核酸治療薬を入手することで、当初予定していなかったメラノーマの創傷部転移の治療実験に移行することができている。
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今後の研究の推進方策 |
POSTNがメラノーマの転移を創傷部に引き寄せる分子であることが明確になったことから、POSTNの産生を抑制する核酸治療薬を用いると、あるいはPOSTNノックアウトマウスでメラノーマ創傷転移モデルを作製すると、メラノーマ細胞の創傷部への転移が生じにくいことを示すことでPOSTNの特異性を明確にする。 メラノーマの肝転移や肉眼的リンパ節転移症例の60%で間質にPOSTNの強発現が認められると報告されている。またメラノーマの皮膚転移があると、内臓転移のリスクが上昇することが報告されていることから、メラノーマ創傷転移マウスでは、傷のないマウスよりも肺転移といった2次転移が促進されるか、そしてPOSTNを治療薬で創傷部転移だけでなく、2次転移が抑制できるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室で所有していた試薬を使用したことで研究費を節約できたことに加え、追加で購入した消耗品が全て年度内に会計処理できなかったためと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、消耗品費を中心に使用する予定である。今後はフローサイトメトリー用の抗体やマウスに関連する費用などで増加すると予想される。
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