研究実績の概要 |
まず抗ラミニン 332 抗体による免疫細胞非依存性の水疱形成能の評価を行った。具体的にはヒト包皮凍結切片上にラミニン332抗体を0.02 mg/mlの濃度で添加し、37℃で24時間反応させた。光学顕微鏡下に裂隙形成の有無を確認したが、切片上で裂隙は生じなかった。 次に表皮ケラチノサイトの細胞株であるHaCaT細胞を用いたin vitroの実験を行った。培養プレート上のHaCaT細胞にラミニン332モノクローナル抗体 (5 mcg/ml, 10 mcg/ml, 50 mcg /ml)およびラミニン332抗体陽性患者から精製したIgG (50 mcg/ml, 150 mcg/ml, 300 mcg/ml)を添加し、18-24時間培養し、洗浄後にプレート上に残存する細胞数を色素で可視化して計測したところ、非添加細胞(コントロール)と比較してラミニン332抗体、患者由来ラミニン332 IgG抗体添加細胞では接着細胞数の減少を認めた。 細胞接着の低下がラミニン332の発現低下によるものかを検証するため、同条件下で培養した細胞を蛍光標識したラミニン332抗体で染色し、蛍光強度から発現量を比較したが非添加細胞に比べて各抗体添加細胞でも有意な低下はみられなかった。またウエスタンブロッティングによる検出においてもラミニン332量は有意な低下はみられず、これらの結果からラミニン332抗体による細胞接着の障害はラミニン332蛋白分解による蛋白減少によるものではなく、抗体による直接的な細胞接着障害による可能性が示唆された。
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