研究課題
本研究は未だ病態が明らかにされておらず、疾患モデルも存在しない遺伝性皮膚疾患ヘイリーヘイリー病について、疾患モデルの作製を行い、病態形成における小胞体ストレス、ゴルジ体ストレスの関与を明らかにすることが目的である。本年度はヘイリーヘイリー病の疾患モデルの作製を行った。まずヘイリーヘイリー病患者より培養表皮細胞の樹立を行った。さらにポリカーボネート製の多孔性素材を用いたウェルインサートを使用し三次元培養皮膚を作製した。さらにレンチウイルスベクター(TRC2-pLKO-puro Sigma社)にATP2C1に対するshRNAを発現させ、polybreneを用いて表皮細胞へトランスダクションし、ATP2C1をノックダウンした安定細胞株を樹立した。その細胞を用いて患者表皮細胞と同様に三次元培養皮膚を構築した。樹立された三次元培養皮膚は、表皮細胞接着障害や角化異常などの形態異常を示し、ヘイリーヘイリー病の疾患モデルとして使用可能であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
三次元培養モデルの作製にやや時間を要したが、これまで存在しなかったヘイリーヘイリー病の疾患モデルの作製に成功した。全体的な進捗状況としてはおおむれ順調に進展している。
H27年度に得られたHHD患者三次元培養皮膚、およびノックダウン三次元培養皮膚よりRNAを抽出しマイクロアレイ(Agilent Technologies社)を用いた遺伝子発現の網羅的解析を行う。健常人三次元培養皮膚と比較し発現変動の見られる遺伝子の中から、アポトーシスに関わる分子(CHOPなど)、アポトーシスを誘導する細胞小器官のストレスセンサー(IRE1など)、ストレス応答に関わるアポトーシス抑制分子(Nrf2など)を抽出する。抽出した分子は、遺伝子発現量をリアルタイムPCR(Light Cycler480 現有設備)で定量し確認する。また遺伝子発現の変化に伴いタンパク発現の変化がみられるかどうかを、タンパクのウエスタンブロット、免疫組織染色で調べる。さらにストレス誘導性アポトーシスに対する抑制作用を持つと報告される薬剤エパルレスタット(50μM)、還元型グルタチオン(1mM)及びその前駆体N-acetyl-L-cysteine(1mM)をそれぞれ投与下に三次元培養皮膚の作製を行い、ストレス関連分子の変化及び形態の改善がみられるかを調べる。これにより病態形成における細胞小器官ストレスの関わりを明らかにする。これらの結果をもとに成果の発表を行う。
H27年度は一般実験試薬、一般実験器具、実験動物等諸費用に当初の予算額を満たす使用額がなかったため、次年度使用額が生じた。
H28年度は一般実験試薬、一般実験器具の他、リアルタイムPCRに必要なプライマーの購入やマイクロアレイの依頼などに費用が必要なため前年度未使用予算を使用する。また研究成果を国内ならびに国際学会等で発表する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)
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