研究課題
本研究は未だ病態が明らかにされておらず、疾患モデルも存在しない遺伝性皮膚疾患ヘイリーヘイリー病(HHD)について、疾患モデルの作成を行い、病態形成における小胞体ストレス、ゴルジ体ストレスの関与を明らかにすることが目的である。具体的には①HHD患者培養表皮細胞、原因遺伝子をノックダウンした培養表皮細胞より三次元培養を用いて疾患モデルを作成する。②これらの三次元培養皮膚を用いて遺伝子発現の網羅的解析を行い、小胞体ストレス、ゴルジ体ストレス応答に関連する分子の変動を明らかにする。③ストレス抑制物質の投与下に形態の改善がみられるかを調べる。H27年度はHHD患者培養表皮細胞、原因遺伝子をノックダウンした培養表皮細胞を用いてヘイリーヘイリー病の三次元培養皮膚疾患モデルの作成に成功した。さらにこれを論文として発表した(Matsuda M. Exp Dermatol. 24(10):788-9)。H28年度は、H27年度に作成したHHD患者三次元培養皮膚、およびノックダウン三次元培養皮膚を用いて、病態形成において小胞体ストレス、コルジ体ストレスの関与があるかについての検討を行った。疾患モデルに、ストレス誘導性アポトーシスに対する抑制作用を持つと報告される薬剤エパルレスタット(50μM)、還元型グルタチオン(1mM)及びその前駆体N-acetyl-L-cysteine(1mM)を投与した。病態においてストレス応答の関与があるのであれば、これらの薬剤の投与により形態異常の改善がみられるはずである。本年度の検討では一部の薬剤の投与下に形態の変化を観察することができ、これにより病態形成におけるストレス応答の関与が示唆された。
4: 遅れている
H28年度はH27年度に得られたHHD疾患モデルを用いて遺伝子、タンパク発現の解析を行う予定であったが、病態モデルからのmRNA、タンパク質の抽出手技の確立に時間を要し病態形成に関わる遺伝子を検索が十分に行えなかった。
H27年度に得られたHHD患者三次元培養皮膚、およびノックダウン三次元培養皮膚よりRNAを抽出しマイクロアレイ(Agilent Technologies社)を用いた遺伝子発現の網羅的解析を行う。健常人三次元培養皮膚と比較し発現変動の見られる遺伝子の中から、アポトーシスに関わる分子(CHOPなど)、アポトーシスを誘導する細胞小器官のストレスセンサー(IRE1など)、ストレス応答に関わるアポトーシス抑制分子(Nrf2など)を抽出する。抽出した分子は、遺伝子発現量をリアルタイムPCR(Light Cycler480 現有設備)で定量し確認する。また遺伝子発現の変化に伴いタンパク発現の変化がみられるかどうかを、タンパクのウエスタンブロット、免疫組織染色で調べる。さらにストレス誘導性アポトーシスに対する抑制作用を持つと報告される薬剤を投与下に三次元培養皮膚の作成を行い、ストレス関連分子の変化がみられるかを調べる。これにより病態形成における細胞小器官ストレスの関わりを明らかにする。これらの結果をもとに成果の発表を行う。
前年度は一般実験試薬、一般実験器具、実験動物等諸費用に当初の予算額を満たす使用額がなかったため、次年度使用額が生じた。
今年度は一般実験試薬、一般実験器具の他、リアルタイムPCRに必要なプライマーの購入やマイクロアレイの依頼などに費用が必要なため前年度未使用予算を使用する。また研究成果を国内ならびに国際学会等で発表する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件)
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