研究課題
多くの研究から、炎症がうつ病の病因・病態に関わっている事が指摘されている。2003年に、ニコチン受容体のサブタイプの一つであるα7サブタイプが、炎症の重要な因子であることが報告された(Wang H. et al. Nature 2003)。我々は、α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスを用いることにより、炎症性うつ病の病態におけるα7ニコチン受容体の役割を調べた。α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスの血液中の炎症性サイトカイン濃度は、野生型と比較して有意に高く、炎症を呈していることが判った。また、α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスがうつ症状を呈することを尾懸垂試験、強制水泳試験、ショ糖飲水試験を実施して見出した。α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスの脳部位をおける脳由来神経栄養因子(BDNF)を調べた結果、側坐核におけるBDNFが有意に高く、他の部位(前頭皮質や海馬)では差が無いことを見出した。さらに、BDNFの受容体であるTrkBの拮抗薬(ANA-12)を投与すると、抗うつ作用を示したが、TrkB作動薬(7,8-dihydroxyflavone)の投与は無効であった。これらの研究成果は論文投稿を行った。次に、α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスのうつ症状に関わる新規分子を最新のプロテオミクス技術を駆使して探索すつ実験を進めた。上記に示したように、うつ症状を呈するα7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスの側坐核で変化しているタンパクが、うつ症状に関係しているという仮説を持ち、iTRAQ解析を実施し、幾つかの候補タンパクを同定した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに、α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスがうつ症状を呈することを見出し、その原因が、側坐核におけるBDNF-TrkB系の亢進であることを見出した。さらに、TrkB拮抗薬の末梢投与および側坐核への直接投与により、。うつ症状が改善した。本研究成果は、現在論文投稿中であり、本研究課題は、おおむね順調に進んでいる。
α7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスのうつ症状に関わる新規分子を最新のプロテオミクス解析を行った結果、EphA4シグナルが関与していることを見出した。今後は、うつ病におけるEphA4シグナルの役割を調べていく予定である。
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Curr Neuropharmacol
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Psychopharmacology
巻: 232 ページ: 4325-4335
10.1007/s00213-015-4062-3