注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;ADHD)は、多動・衝動性および不注意を基本症状として、種々の生物学的要因(ドパミン仮説を例に挙げれば、背外側前頭前野皮質―尾状核―淡蒼球-視床と続く神経回路の障害)を基盤に、養育に関連した心理的要因や環境要因、さらに行動統制を要求される現在の生活環境などが複雑に絡み合って症状を呈するものと理解されている。治療としては認知行動療法を中心とする心理社会的な治療・支援の提供と、不注意や多動性・衝動性の改善を目的とする薬物療法が主として行われている。 近年、チペピジンヒベンズ酸塩などのGタンパク質共役型内向き整流性K+(GIRK)チャネル活性化電流抑制が神経興奮の制御に重要であることが示唆されており、その作用を持つ薬剤がADHDの新たな治療薬として期待されている。 本臨床試験の主要目的は、80名の小児思春期ADHD患者(6歳から17歳)を対象として、チペピジンヒベンズ酸塩またはプラセボを4週間投与した際の臨床症状への有効性および忍容性を比較検討するものである。プラセボ対照、ランダム化、二重盲検、並行群間比較による探索的臨床試験であり、主要評価項目は、実薬群とプラセボ群における投与前から 投与4週間後のADHD-RS合計得点の変化量であり、副次的評価項目は、ADHD-RSの下位尺度の合計得点の変化量、DN-CAS各得点の変化量、CGIの変化量、血中バイオマーカーの変化量である。 最終2018年度までに合計21名が臨床試験同意・実施された。1名が本人希望により中止となったが、重篤な有害事象は認めなかった。2018年12月31日にて症例登録終結としデータ固定後、結果解析中。
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