研究課題
健常者、精神病ハイリスク、早期精神病の患者を対象に聴覚オッドボール課題を行い、その間の脳波を測定した。陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて臨床症状を、機能の全体的評定(GAF)尺度を用いて機能障害を評価した。本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得ており、全ての被験者に対して文書で説明を行い、文書にて同意を得た。被験者に聴覚オッドボール課題を行い、その間の脳波を測定した。脳波の解析として、まずは事象関連電位の一つであるミスマッチ陰性電位(MMN)を調べた。聴覚オッドボール課題として持続時間(duration)を逸脱させた課題と周波数(frequency)を逸脱させた課題を行った。先行研究と同様に、duration MMN(dMMN)は早期精神病群およびハイリスク群で健常対照群と比べて振幅減衰していた。一方、frequency MMN(fMMN)は早期精神病群およびハイリスク群で健常対照群と比べて振幅の違いを認めなかった。以上の結果をふまえ、持続時間を逸脱させた聴覚オッドボール課題での神経オシレーションを解析した。その結果、早期精神病患者では神経オシレーションの同調作用および周波数間の相互作用のパターンが健常対照者とは異なることを見出した。MMNの縦断的変化について調べたところ、早期精神病群、ハイリスク群、健常対照群ともにdMMNとfMMNの両方で振幅が変化しないことを見出した。MMNと臨床症状や認知機能障害との関連について調べたところ、dMMN振幅減衰は早期精神病群とハイリスク群の両方で機能障害と相関したのに対し、fMMN振幅は早期精神病群でワーキングメモリの障害と相関した。MMNとグルタミン酸血中濃度との関連について調べたところ、dMMN振幅減衰は早期精神病群でグルタミン酸血中濃度上昇と相関した。
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