研究課題/領域番号 |
15K19717
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 千秋 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 研究員 (40644034)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 母子インタラクション / 脳磁図(MEG) / Mu suppression / 社会性 |
研究実績の概要 |
本研究は自閉スペクトラム症児の社会性と母親の共感性を①縦断的質問紙調査②神経生理学的指標の2つのアプローチにより解明することを目的としている。これまでに17組の自閉スペクトラム症児とその両親を対象に縦断的質問紙調査を行い,子どもの対人応答性尺度 (Social Responsiveness Scale: SRS) と両親の共感指数 (empathy quotient)の変化に有意な負の相関があることを明らかにした。つまり両親の共感性の向上と、子どもの社会性の障害の改善との間に何らかの関係があることが示唆された。その結果はH27年8月,Psychiatry Research に発表した。 親の共感性と子どもの社会性の関連を生理学的指標から捉えるために,共感性や他者の感情理解に重要な役割を担うMirror neuron system(MNS)を反映しているとされるMu suppressionを計測した。計測には無音で非侵襲的な機器である脳磁図(MEG)を用いた。H28年度は前年度に引き続き自閉症スペクトラム症児およびその母親のインタラクション中の脳活動を計測した。4~7歳の自閉症スペクトラム症児とその母親13組を解析対象にした結果,母子がお互い見つめ合っている状態で生じるMu suppression指数が子どもの社会性を表すSRS得点と母親の自閉症スペクトラム指数(Autism spectrum quotient)得点と相関することが明らかになった。このことから,Mu suppressionは社会性や共感性の有用な指標となりうる可能性が示唆された。この結果はH28年10月,Scientific Reportsに発表した。またH28年度には自閉症スペクトラム症児に加え,比較検討を行うための定型発達児およびその母親のデータを収集しており,H29年度も継続していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉スペクトラム症幼児の社会性交流のの障害の改善度と、両親の共感性の向上の関連に関する予備的縦断質問紙調査論文および,Mu suppressionを指標とした母子インタラクション課題における社会性の評価に関する論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き母子MEG計測課題の計測を行いサンプルサイズを増やす。さらに,自閉症スペクトラム症児の対人インタラクション特性の解明につながる実験プロトコルおよび解析手法の改良に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者への謝礼として計上していた人件費を,COIセンターオブイノベーションプログラム「人間力活性化によるスーパー日本人の育成拠点」(拠点:大阪大学,サテライト:金沢大学)の予算から支出したため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験参加者に支払う謝礼および英文校閲費として人件費・謝礼に使用する予定である。またデータの保管に必要なハードディスクドライブなどの物品を購入する予定である
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