研究課題
注意欠如・多動性障害 (ADHD) と 自閉症スペクトラム障害 (ASD) は高率に合併し、両障害において前頭葉機能障害が指摘されているが、早期診断の観点から、各障害における前頭葉機能の特徴を明らかにすることが本研究の目的である。ADHD男児30名(9.5 ± 1.6歳)、定型発達男児35名(9.0 ± 1.6歳)を対象として、前頭葉機能評価バッテリー (CANTAB)の Spatial Working Memory(SWM)課題施行時の脳活動変化を Near-infrared spectroscopy (NIRS) により計測した。課題のエラー数に群間差は認めなかった(ADHD群25.2±11.3、定型発達群21.1±12.3、p =0.171)。発達的変化を検討するため、年齢と課題成績、年齢と脳活動変化の相関分析を各群で行った。その後、両群の発達的変化の比較を行うため、課題成績、および脳活動における回帰係数の傾きの差の検定を行った。両群ともに年齢とエラー数に負の相関を認め (ADHD: r(28) = -0.37, p = 0.040; 定型発達: r(33) = -0.59, p < 0.001)、年齢に伴う課題成績の向上を示したが、定型発達群は両側の外側前頭前野(4ch,13ch)と前頭極(10ch,11ch)の活動が年齢とともに増大していたのに比べて、ADHD群は年齢と脳活動に有意な相関は認めなかった。したがって、ADHD児は前頭前野の発達が不十分であることが先行研究により示されており、そのため、他の領域による代償的な活動によって課題成績を補っている可能性が示唆される。本研究内容を英文論文として発表した。
2: おおむね順調に進展している
ADHD群と定型発達群の前頭葉機能の発達的変化を測定し、両群の差を確認し、英文論文として報告した。おおむね順調に進んでいると考えられる。
今後はASD群や合併群での検討に着手する予定である。得られた結果については、学会発表および論文投稿により発信していきたいと考えている。
計画よりも諸費用が少なかったため。
解析に必要なPCソフトの購入など、計画以外の費用が生じた場合に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Brain & Development
巻: 38 ページ: 471-480
10.1186/s13229-016-0083-y. eCollection 2016.