研究課題/領域番号 |
15K19722
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生方 志浦 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40738960)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 社会的認知 / リハビリテーション / 生活習慣 / MRI / 社会機能 |
研究実績の概要 |
本研究は脳損傷後に生じる高次脳機能障害に対して、社会復帰を促進するために認知リハビリテーションを中心とした介入を行い、その有効性を検証するものである。平成27年度に引き続き、各患者のベースラインを測定するために、3テスラMRIを用いた安静時脳活動およびT1強調画像、拡散強調画像などの構造画像の撮像に加え、社会的認知を含めた神経心理学的検査、社会機能評価を実施し、患者の障害プロフィールを作成することを目的とした。リハビリテーションを含めた介入の内容については、24時間の生活活動評価を用い、生活習慣を評価することで、患者ごとに受けている介入の内容・頻度について把握できるようにした。 平成28年度は前年度からの累計で合計70例の外傷性脳損傷患者の神経画像の撮像、神経心理学的検査、社会機能評価、生活活動評価を行った。そのうち24名は1年を中央値として再評価を実施し、縦断研究としての追跡も行っている。 神経画像評価については、70例のうち24名のびまん性軸索損傷患者を対象にT1画像、拡散強調画像を用いて白質・灰白質の構造異常の解析を行った。患者群では脳梁の繊維数が健常群と比べて減少しているが、脳梁が繊維連絡をしている両側の灰白質の体積は大部分が保たれているという結果が得られた。また外傷性脳損傷例70例全例を対象とした社会機能の予測因子に関する調査では、客観的な社会機能には脳損傷の重症度、年齢、認知の処理速度、心の理論課題の成績が、主観的なQurality of lifeには抑うつ症状が関連することが示された。疲労は両者に関連することが明らかとなった。 今後は各種リハビリテーション、介入の効果についての検証も行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次脳機能障害の臨床研究および神経画像研究においては、障害像が多様であるために症例を多数集めて検証を行うことが重要となる。本研究においては研究代表者の所属機関において幅広く高次脳機能障害の外来診療を行っており、症例の蓄積が順調に進んでいる。認知リハビリテーションはリハビリテーション部との協業で行っているが、対象患者ごとに主目的が異なるなどの問題もあり、社会的認知に特化したものに限らず、認知リハビリテーション全般を対象とするように計画の変更を行うことで対応している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はさらに症例を蓄積し、まずは被験者の障害プロフィールについての詳細な解析を進める。縦断研究の解析も進め、認知リハビリテーションおよび各患者の生活習慣が社会機能や脳機能に及ぼす影響についても検討を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析用ハイスペックコンピューターを購入予定であったが、新規の解析方法の講習でも使用できるノート型PCの購入に変更したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に解析用ハイスペックコンピューターを購入する。
|