研究課題/領域番号 |
15K19723
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 有紀子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80647131)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 注意 / 眼球運動 / biological motion知覚 / 社会認知 / MRI / 統合失調症 |
研究実績の概要 |
統合失調症の社会認知障害は「注意‐社会知覚‐社会認知」という複数の認知処理過程の統合と捉えられる。本研究では、統合失調症において障害され、かつ社会認知にとって重要な役割を持つ社会知覚として、他者の動きの知覚(biological motion知覚)に焦点を当てた。初年度は、統合失調症における社会認知障害の階層的処理過程を明らかにするために、アイトラッカーとMRIを用いて、視覚的注意とbiological motion知覚の神経基盤を同定した。 統合失調症患者において、voxel-based morphometry (VBM) により、biological motion知覚課題の正答率と相関する脳部位を探索したところ、側頭頭頂接合部と前部上側頭溝の体積が課題正答率と相関した。一方、眼球運動指標を用いて注意の影響を制御したVBMでは、正答率と側頭頭頂接合部の体積の相関は消失した。さらに患者において、注意とbiological motion処理がそれぞれどの程度課題正答率に寄与するかを重回帰分析により評価したところ、注視点の数と前部上側頭溝の体積の双方が、正答率に多大な影響を与えることが判明した。 これらの結果から、患者における側頭頭頂接合部の変化はbiological motion知覚時の注意の方略に関与し、前部上側頭溝の変化は高次のbiological motion処理そのものに関与することが示唆された。統合失調症における社会認知障害の発現には、階層的処理過程およびそれに対応する脳部位の異常が関わっており、本研究の知見は、注意を操作する社会認知リハビリテーションの開発やその評価に役立つことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統合失調症の社会認知障害に関するMRI研究はほぼ予定通り進行でき、一部は論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、安静時fMRI画像を用いて、注意や社会認知に関わる灰白質間の機能的コネクティビティ異常を同定し、各認知機能との関連を明らかにする。さらにはbiological motion知覚課題を用いて認知トレーニングを行い、各認知機能・社会機能、および機能的コネクティビティ・灰白質構造の変化から、治療効果、回復機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
デスクトップ型解析用パソコンの購入を次年度に見送ったこと、及び他の研究との被験者共有により謝金支払額が減ったことが、主な理由と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
予定されていた物品購入は次年度以降に繰り越す。人件費、謝金については次年度も引き続きデータ収集を行うため、必要に応じて支払う。また初年度は研究成果を発表する機会が少なかったが、次年度以降、学会参加費用、論文投稿料としても使用していく。
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