研究課題
慢性疼痛は一般人口の5 人のうち1 人にみられる非常に頻度の高い症候であり、ADL の低下、うつ病などの精神疾患の併発など身体・精神機能に大きな悪影響を引き起こす。抑うつや生活活動の制限といった心理社会的影響が疼痛の慢性化・難治化にかかわる主要因といわれており、抗うつ薬治療や認知行動療法など多面的治療が必要である。しかし現時点では両治療法の効果は十分とはいえず、更なる治療工夫が求められている。そのためには両治療法の治癒過程における神経科学的修復機構を明確にすることは大変重要である。本研究は慢性疼痛に対して抗うつ薬、認知行動療法の治療を行い、神経科学的修復機構の異同を明らかにすることを目的とする【平成27年度】慢性疼痛に対して認知行動療法あるいは抗うつ薬治療を行い、それぞれの治療前後において疼痛尺度、心理社会的尺度、神経科学的評価法(fMRI)を施行している。疼痛尺度は、主観的な疼痛感覚を様々な視点から評価するMcGill Pain Questionnaire(MPQ)、Pain Catastrophizing Scale(PCS)、Visual Analogue Scale(VAS)、心理社会的尺度は、主観的な抑うつ気分を評価するBeck Depression Inventory(BDI)、主観的な不安状態を評価するState-Trait Anxiety Inventory(STAI)、社会機能を評価するMedical Outcomes Study 36-Item Short Form(SF-36)、fMRIは、賦活時fMRI と安静時fMRI を行っている。賦活時fMRI は疼痛刺激と表情刺激を用いた情動疼痛課題である。上記研究を実施し、被験者数の蓄積を行っている。慢性疼痛に対する認知行動療法における疼痛尺度、心理社会的尺度への効果については査読付きの国際誌に投稿し現在出版されている。
2: おおむね順調に進展している
慢性疼痛に対して、おおむね順調に治療介入ならびに治療前後のデータを蓄積しており、またその一部の内容を平成27年度内に国際誌にて発表するなど、一定の成果を上げることができたため。
慢性疼痛に対する抗うつ薬治療、認知行動療法前後での疼痛・精神症状・QOL、神経科学的評価のデータ収集を継続する。
平成27年度において実施する予定であった研究計画に若干の遅れが生じたため。
研究費を次年度に一部繰り越し、平成28年度の早い時期にそれらの研究を(H27年度分の研究の一部である慢性疼痛患者に対する情動疼痛課題)行うことにした。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Psychiatry and Clinical Neurosciences
巻: 69 ページ: 763-772
10.1111/pcn.12330