研究課題/領域番号 |
15K19731
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山脇 洋輔 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (90584061)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症 / グリア細胞 / 摂食行動 / サイトカイン / うつ病 |
研究実績の概要 |
Phospholipase CはToll-like receptor 4 を介した炎症反応を制御することが明らかとなっており、我々はPLCの構造類似体であるPLC-related catalytically inactive protein (PRIP)の欠損マウスが炎症に対して脆弱性を示すことを見出した。うつ病などの精神疾患の病態生理はいまだに不明な点が多く残されている。近年、脳内における免疫応答の亢進がうつ病の病態に関与することが明らかとなってきた。本研究では、PRIPと脳内免疫応答の関与を明らかとすることを目的としてPrip欠損マウスを用いて実験を行っている。これまでに我々は、Prip欠損マウスがストレス負荷に対して脆弱性を示すことを見出し、ストレス応答におけるPRIPの関与の可能性を明らかにした。また、Prip欠損マウスはlipopolysaccharide (LPS) 誘発性の摂食抑制行動に対して脆弱性を示し、これは視床下部における炎症反応の亢進によるものである可能性を見出した。加えて、PRIPは脳内免疫応答を司るミクログリアにおける炎症反応を制御することも明らかとした。よって、PRIPが脳内免疫応答を制御し、中枢機能に関与する分子であるという知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性ストレスによる応答として、野生型とPRIP欠損マウス間にうつ病様行動に有意な差を観察した。慢性ストレスにより脳内炎症が引き起こされることから、lipopolysaccharide (LPS) 投与による炎症反応時における中枢機能を解析したところ、PRIP欠損マウスは炎症反応時の摂食行動が野生型に比べて有意に低下することを見出した。また、PRIP欠損マウスにおいて、摂食中枢である視床下部の炎症性サイトカインの遺伝子発現は野生型よりも亢進しており、これは脳内免疫担当細胞であるミクログリアにおける抗炎症性サイトカインの発現低下によるものである可能性を見出した。これらの結果は当初の計画通り、ミクログリアにおいて、PRIPがストレス応答に対して重要な役割を担うことを示すものである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ミクログリアにおいて、PRIPがストレス応答に重要な役割を担うことを示した。今後は、ミクログリアにおけるPRIPの機能を、炎症反応時のシグナル機構や、グリア細胞間あるいはグリア細胞-神経間の情報伝達などに着目して分子生物学的手法を用いて解明することを目的として研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外からの試薬の輸入が年度内に間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに試薬は入手している。研究計画に変更はなく、記載の計画通りに研究を遂行する予定である。
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