研究課題
うつ病は、睡眠障害や抑うつ気分、摂食障害、社会的引きこもりなどの症状を呈する疾患である。うつ病には脳内における炎症反応の亢進が深く関与することが明らかとなってきた。これまでにPrip欠損(KO)マウスは野生型(WT)マウスに比べて、lipopolysaccharide(LPS)による視床下部における炎症性サイトカインの発現や、それに伴う摂餌量低下が増大することから、PRIPは中枢炎症を負に制御する分子であることを明らかにした。本年度は、PLC-related catalytically inactive protein (PRIP)の中枢炎症反応における役割の解明をミクログリアに着目して試みた。MACSシステムを用いて視床下部から単離したミクログリアにおける炎症性サイトカインの遺伝子発現を、qPCR法を用いて検討した結果、KOマウスにおける炎症性サイトカインの遺伝子発現はWTマウスに比べて有意に高かった。初代培養ミクログリアを用いた検討において、KOはWTよりもAKT-IKK経路が亢進している一方で炎症性サイトカインの発現には遺伝子型間に差は観察されなかった。しかしながら、ミクログリア-アストロサイトの共培養系をLPSで刺激するとミクログリアにおける炎症性サイトカインの発現はWTに比べてKOで上昇した。これらの結果は、PRIPによるAKT-IKK経路の亢進は、グリア間の情報伝達を増大させる役割を担うことを示唆している。本研究において、PRIPは中枢炎症において、グリア間コミュニケーションを調節することで摂餌行動を制御する分子であることを明らかとした。
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