研究課題/領域番号 |
15K19740
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
須田 顕 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60644656)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | NMDA受容体抗体 / 自己免疫性脳炎 / 橋本脳症 / 中枢神経ループス / 髄液 / GWAS |
研究実績の概要 |
抗N-methyl-d-aspartic acid(NMDA)受容体抗体陽性脳炎は、抑うつ状態・不安状態から幻覚妄想状態、認知機能障害など多彩な精神疾患を急性~慢性に呈する自己免疫疾患である。本研究は抗NMDA受容体抗体陽性脳炎で生じる認知機能低下、幻覚妄想、抑うつなど多彩な精神症状の病態を解明するために、その症状・血液生化学・髄液検査・画像検査所見と遺伝子検査所見の関連を調査している。当該年度内には対象者として精神疾患の診断を満たす抗NMDA受容体抗体陽性者41例のDNAサンプルおよび各種臨床所見の収集を行った。また、一般髄液検査正常のNPSLE患者の髄液で抗NR1抗体、抗NR2抗体を測定し、患者背景、臨床症状、認知機能との関連を調査した。その結果、髄液の抗NR1抗体と抗NR2抗体は相関係数0.967(p<0.001)と強い相関を認めたほか、WAIS-Ⅲの比較で、抗NR1抗体陽性群は陰性群より全検査IQ、言語性IQ 、動作性IQ、言語理解、知覚統合、処理速度の得点が有意に低いという結果を得た。抗NR2陽性群は陰性群より動作性IQ、全検査IQで得点が有意に低かった。抗NR1抗体、抗NR2抗体ともに抗体価と認知機能の関連を認めたが、抗NR1抗体陽性群における認知機能障害は、広範囲であった。抗NR1抗体と抗NR2抗体の相関が強く、各抗体の独立した機能の検討は困難であるが、NR1、NR2の分布や抗NR1抗体と抗NR2抗体の作用機序の違いが、両抗体の有無による認知機能障害のパターンの差に影響している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンプルは予定通り収集できている。平成27年度内に遺伝子解析まで行う予定であったが、サンプル数を可能な限り多くしてから解析することで、生化学的な検査に必要なコストを削減することができるため、研究協力者の募集を優先し、遺伝子解析は次年度に持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き髄液中抗NMDA受容体抗体陽性の対象者を募集しサンプル数を増やす。対照群となる抗NMDA受容体抗体陽性者、精神疾患の既往のない自己免疫性疾患患者のサンプルも同時に集め、平成28年度内に遺伝子解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に解析することで、サンプル数を十分に蓄え遺伝子解析のコストを節約することができるため、あえて平成27年度はすべての予算を執行しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度予算と合わせて遺伝子解析費用に全額使用する。
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