研究実績の概要 |
抗N-methyl-d-asparatic acid(NMDA)受容体抗体陽性脳炎は認知機能低下、幻覚妄想、抑うつなどの多彩な精神症状を呈し、その病態は不明点が多く、臨床症状のみでは一般の精神疾患の鑑別が困難である。本研究では臨床徴候と抗NMDA受容体抗体の抗体価の関連についてさらに探求するとともに、抗NMDA受容体抗体陽性者の中での精神症状の重症度並びに症状の差異に影響するバイオマーカーの探索を試みた。 申請者が診療を行う病院に通院中あるいは入院中の精神疾患を持つ患者で、同意を得られた48人を対象とした。対象者を精神病性の症状を呈した既往のある群と、そうでない群に分け、すでに統合失調症の関連遺伝子として報告されている遺伝子(COMT,DISC1, NRG1, DRD2)の機能的SNPの頻度を比較した。結果としていずれのSNPにおいても両軍に有意な頻度の差を認めなかった。 本研究の結果、今回対象とした遺伝子が精神症状の発症に関与している可能性を明らかにすることはできなかったが、今後はより大きな対象者数で網羅的な検索を行うことで抗NMDA受容体抗体陽性者の精神症状に関与する分子の特定を目指す。 現在は上記に加えてさらにNeuropsychiatric Systemic Lupus Erythematosus (NPSLE)患者を対象として、同様の調査を継続し、SLEの精神症状のリスクとなる分子の特定を試みている。
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