研究課題/領域番号 |
15K19746
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
林 有希 獨協医科大学, 医学部, 助教 (70592632)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エナンチオマー / グルクロン酸抱合 |
研究実績の概要 |
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)であるミルタザピン(mirtazapine:MIR)の代謝はCYP2D6遺伝子多型の影響を受けることが報告されている。MIRの臨床用製剤はS体とR体が各々50%ずつ含まれるラセミ体として供給されているが、光学異性体ごとに薬力学的プロファイルが異なるため、S-(+)-MIRとR-(-)-MIRの血漿中濃度測定が臨床上、有用であると考えられている。MIRを投与された日本人の精神疾患患者を対象にMIRとその代謝物の光学異性体血漿中濃度測定を行い、CYP2D6遺伝子多型をはじめとするMIRの代謝に与える影響する因子について検討した。研究プロトコールは獨協医科大学病院および弘前大学附属病院の倫理委員会の承認を得ている。喫煙者の体重あたりMIR投与量で補正されたS-(+)-MIR血漿中濃度は非喫煙者群に比較して有意に低かった。また喫煙者群の体重あたりMIR投与量で補正されたR-(-)-MIR血漿中濃度では非喫煙者群に比較して低い傾向を認めた。CYP2D6遺伝子変異アリルを2つ持つ個体群(*10/*10)は変異アリルをもたない個体群(*1/*1, *1/*2)と比較して、体重あたりMIR投与量で補正されたS-(+)-MIR血漿中濃度が有意に高かった。重回帰分析では、CYP2D6*10変異アリル数が体重あたりMIR投与量で補正されたS-(+)-MIR血漿中濃度と有意に相関していた。本研究によりCYP2D6*10遺伝子型と喫煙がS-(+)-MIRの代謝に影響する因子であると示唆された。また、最近の研究では主要代謝産物である8-OH-MIRの血中濃度が極めて低く、水酸化代謝物の殆どがグルクロン酸抱合体として血中に存在することを確認している。現在グルクロン酸抱合経路を含めた包括的解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の研究成果をもとに原著者として論文を完成し、またmirtazapine(MIR)の水酸化物である8-OH-MIRを含めたグルクロン酸抱合についての研究も進めており進歩状況としては概ね順調といってよい。
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今後の研究の推進方策 |
mirtazapine(MIR)服用中の患者からのサンプル採集を継続しつつ、グルクロン酸抱合経路を含めた包括的解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会に出席しなかったことにより、旅費の支出がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
CYP2D6遺伝子解析の費用やmirtazapineとその代謝産物である8OHMIR等の血漿中濃度測定のための費用として充当する予定である。
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