研究課題/領域番号 |
15K19749
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
片桐 直之 東邦大学, 医学部, 助教 (70459759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 精神病発症危険状態 / ARMS / 閾値下の精神病症状 / SIPS/SOPS / MRI / 早期介入 / レジリエンス / 脳梁 |
研究実績の概要 |
平成29年度も、前年度に続き、精神病発症危険状態(At risk mental state; ARMS)群と健常者群の募集を行った。一年間(52週)の観察期間での精神病への移行と発症閾値下の精神症状は、SIPSにより定期的に調べ、一年間で精神病への移行が認められた群をARMS発症群、認められなかった群を非発症群とした。 健常群とARMS症例に対しては、研究への参加時(Baseline)に、脳MRI T1強調画像を撮像した。また、ARMS症例に対しては、SOPSにより精神症状の評価を行った。52週経った時点で、ARMS症例に対しては、再度、脳MRI T1強調画像の撮像とSOPSによる精神症状の評価を行った。 既に平成28年度においてARMS症例は40症例を超え統計解析の施行が可能な症例数に達していたため、平成29年度は、10月14日~21日に研究協力者であるMelbourne Neuropsychiatry CentreのChristos Pantelis教授の指導のもと画像統計解析を行い、以下の結果を得た。(1)Baselineの時点でARMS非発症群と健常群の間で脳梁のmid anterior, central, mid posteriorで有意な体積の差を認めた。これは、これまで偽陽性と考えられてきた非発症群においても生物学的なアブノーマリティーが生じていることを示唆するものである(横断的研究)、(2)さらにARMS非発症群において1年間の閾値下の精神症状の改善に脳梁centralの体積の1年間の増加が有意に回帰した。これは、脳には生物的な回復力(レジリエンス)が備わっていることを示唆する結果である(縦断的研究)。これらの結果は、論文にまとめられ、Psychiatry Research: Neuroimaging に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は論文投稿を目標とした。予定通り10月14日~21日に研究協力者であるMelbourne Neuropsychiatry Centreに出張し、Christos Pantelis教授の指導のもと画像統計解析を行い、以下の結果を得た。(1)Baselineの時点でARMS非発症群と健常群の間で脳梁のmid anterior, central, mid posteriorで有意な体積の差を認めた。これは、これまで偽陽性と考えられてきた非発症群においても生物学的なアブノーマリティーが生じていることを示唆するものである(横断的研究)、(2)さらにARMS非発症群において1年間の閾値下の精神症状の改善に脳梁centralの体積の1年間の増加が有意に回帰した。これは、脳には生物的な回復力(レジリエンス)が備わっていることを示唆する結果である(縦断的研究)。これらの結果は、論文にまとめられ、Psychiatry Research: Neuroimaging に掲載された。 また、当研究においては、さらに脳梁と前頭前皮質など他の脳部位との体積の変化の縦断的関連を明らかにし、発症、若しくは発症阻止の生物学的背景を調べる予定であるが、同解析も順調に進んでいる。以上より、平成29年度の目標は概ね達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当研究においては、脳梁と前頭前皮質など他の脳部位との体積の変化の縦断的関連を明らかにし、発症、若しくは発症阻止の生物学的背景を調べる予定である。平成30年度以降は脳内の複数部位の解析を行うことから、統計学的な妥当性を得るため、さらにARMSや健常者の症例数を増やす必要がある。従って、今後もARMS症例と健常者の募集の継続を予定している。 また、引き続きBaseline から一年経ったARMS 症例に対しても、baselineと同じく脳 MRI T1 強調画像を撮像し、SOPSにより52週の時点の精神症状の評価を行う予定である。これらの結果をまとめ、再度Melbourne Neuropsychiatry CentreのChristos Pantelis教授のもとに行き解析することを予定している。得られた結果は、10月に国際学会 11th International Conference of Early Intervention in Mental health (Boston) で報告した上で、論文投稿を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度中は、主にARMS群の募集を行い、baseline から一年経ったARMS 症例に対してもbaselineと同じく脳 MRI T1 強調 画像を撮像するとともに、SOPSにより52週の時点の精神症状の評価を行った。平成29年度中はARMS群の募集と論文作成に注力したため、健常者の募集を十分に行うことができず、同群の募集とデータ管理の予算が使用されなかったため次年度使用額が生じた。また、当初は全データの収集、管理、解析のために人件費を計上していたが、同論文作成に注力する間、データの収集、管理業務量が予定より少なく、人件費が不要となった。 (使用計画) 平成30年度以降は、脳梁と前頭前皮質など他の脳部位の体積の変化の縦断的相違や関連を明らかにすることを予定している。複数部位の解析を行うことから、統計学的な妥当性を得るため、ARMS群や健常群のデータ数を増やす必要があり、両群の募集を予定している。データの収集、管理、解析のためには、業務量が大きく増すことが予測され、人件費を計上する必要がある。また、脳梁と他の脳部位との解析行う上で更なる解析が必要であり、再度Melbourne Neuropsychiatry CentreのChristos Pantelis教授のもとに行き解析を行うことを予定している 。 また、国際学会(IEPA)での発表も予定している.
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