研究課題/領域番号 |
15K19749
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
片桐 直之 東邦大学, 医学部, 講師 (70459759)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精神病発症危険状態 / ARMS / 精神病発症閾値下の精神病症状 / SIPS/SOPS / MRI / 早期介入 / レジリエンス / 脳梁 |
研究実績の概要 |
統合失調症において、精神症状が改善した症例では脳梁の白質の統合性が改善することが報告されている。これは、精神病症例の認知機能や精神症状の改善には脳梁の生物学的な改善が寄与することを示唆するものである。本研究はARMS非発症症例の発症閾値下の精神症状の発現阻止や改善においても、脳梁の生物学的変化が関連するという仮説をたて検討することを目的としている。 既に平成29年度に、これまで偽陽性と考えられてきた非発症群においても健常群と比べ脳梁のアブノーマリティーが生じていることを示唆する結果、また、脳梁の体積の増加と閾値下の精神病症状の改善が相関する結果を示し論文発表した。 平成30年度には、さらに脳梁と神経連絡を持つ、脳内の各神経核の体積の縦断的変化やこれら神経核も発症閾値下の精神症状の発現阻止や改善と関連するかを調べた。 その結果、(1)Baselineの時点でARMS非発症群と健常群の間で被殻の有意な体積の差を認めた。これは、これまで偽陽性と考えられてきた非発症群においても脳梁との関連が示唆される部位でアブノーマリティーが生じていることを示すものである。(2)さらにARMS非発症群において側坐核の体積の1年間の縦断的な増加が、閾値下の精神病症状の1年間の改善に回帰した。これも、脳梁との関連が示唆される部位にも回復力(レジリエンス)が備わっていることを示す結果である。これらの結果は、論文にまとめられ、Psychiatry Research: Neuroimaging に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画は概ね順調に達成されてきた。上述のように、既に、一部研究成果は国際学会や論文で発表を終えている。しかし、研究を進めてきた中、脳梁のみならず、脳梁と神経連絡を有する側坐核などの神経核も、発症閾値下の精神症状の発現阻止や改善と関連することが明らかになった。 そのため、研究計画の仮説を完全に立証する上で、関連する神経核と脳梁の関係性につき、さらに解析する必要が生じた。 その上で、統計学的な有意性を担保するために被験者(ARMS群、健常群)を追加で募集し規模を増して再解析を行う必要性が生じた。これら研究計画の 見直しのため、補助事業期間の延長が必要と判断し申請した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は、脳梁と被殻、尾状核や側坐核など他の脳部位との体積の変化の縦断的関連を明らかにすることを予定している。複数部位の解析を行うことから、統計学的な妥当性を得るため、さらにARMSや健常者の症例数を増やす必要がありARMS症例と健常者の募集の継続を予定している。また、引き続きBaseline から一年経ったARMS 症例に対しても、baselineと同じく脳 MRI T1 強調画像を撮像し、SOPSにより52週の時点の精神症状の評価を行う予定である。これらの結果がまとまり次第、学会発表或いは、論文作成を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度中は、学会発表や論文作成に注力し、ARMS群、健常者の募集を十分に行うことができず、次年度使用額が生じた。また、当初はこれらのデータの収集、管理、解析のために人件費を計上していたが、論文作成に注力する間、データの収集、管理業務が当初の予定より少なく、人件費が不要となった。 平成31年度以降は、脳梁と被殻、尾状核や側坐核など他の脳部位の体積の変化の縦断的相違や閾値下の精神病症状との関連を明らかにすることを予定している。複数部位の解析を行うことから、統計学的な妥当性を得るため、ARMS群や健常群のデータ数を増やす必要があり、両群の募集を予定している。データの収集、管理、解析のためには人件費を計上する必要がある。また、国内外の学会での発表を予定している。
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