(1)強迫症(OCD)の10年間にわたる長期予後における寛解や治療無反応に関わる臨床要因の探索、(2)OCD初発群(初発から一年以内)と長期フォロー群(20例)に頭部VBM、DTI、resting-state fMRI(rs-fMRI)を用いて両群の形態学的、神経連結路の差異を評価する研究を行った。(1)に関して、OCD患者79例に対して経過をフォローしY-BOCS(強迫症重症度評価尺度)で評価したところ、初診から10年後に38人が完全寛解、29人が部分寛解、12人で治療反応性が乏しかった。以上を3群に群別し、統計解析したところ、初診時に早期発症していた者、GAF(機能の全体的評定)が低得点、強迫症状への洞察不良、ホーディング症状や他者への強迫の巻き込み症状、自閉症傾向、人格的問題の存在が治療反応不良の重要な因子であった。さらに、初診から一年後の改善率やGAF得点が10年後の治療転帰を予測する重要な因子であると特定した。そして、総合的に考えると社会的機能や対人相互能力が高いことがOCD患者での良好な転帰につながり、早期の治療介入が重要であると結論づけた。この結果は2015年度、WPA(World Psychiatric Association)にて報告し現在国際雑誌に投稿中である。(2)については、現在20例のOCD患者をリクルートし20名のMRI撮影を終えている。今後OCD患者40名、健常者40名を集積しデータ解析し国内あるいは国際学会にて結果を発表する予定である。
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