研究課題/領域番号 |
15K19757
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
河上 緒 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究員 (60748838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タウ / 神経原線維変化 / アルツハイマー病 / 神経原線維型認知症 / 伝播 / 線条体 |
研究実績の概要 |
神経原線維変化型認知症(tangle predominant dementia: TPD)は,神経細胞内に蓄積したタウの形態や生化学的性質がADと類似しているとされるが,ADとTPDとでは,海馬辺縁系において,各部位におけるNFTの出現頻度が異なる.また,TPDでは側坐核において高度なタウ蓄積が明らかになっており,側坐核のタウ蓄積が疾患後期に出現し,海馬・辺縁系からの入力に沿ってこれらの部位からの伝播によって生じたと仮説を立て研究を行った.H27年度は,AD・TPD患者,非認知症高齢者の剖検時に採取した脳組織から,ホルマリン固定パラフィン標本,ならびに4%パラフォルムアルデヒド短時間固定・凍結切片を作製し,対応する部位の未固定凍結試料を得た.さらに海馬・辺縁系の様々な部位,大脳新皮質,線条体(尾状核,被殻,側坐核)のタウ異常蓄積を免疫組織学的に解析した.線条体はstriosomeとmatrixと呼ばれる2つの神経化学的・神経解剖学的に性格が異なる部位で構成されているため,calbindin,tyrosine hydroxylase,AChE等,既知のマーカーによりstriosomeとmatrixとを染め分け,その連続切片において異常リン酸化タウの分布と比較し,その隣接切片において異常リン酸化タウの免疫染色を行った.同時に大脳皮質の様々な部位におけるタウ異常蓄積も免疫組織化学的に検索した.結果は,TPDにおいて,タウ異常蓄積はmatirxよりstriosomeに多数認められ,大脳新皮質からの入力が主体であるmatrixにはタウ陽性細胞は稀であった.一方,AD では病変の進展が軽い時期には 少数のタウ陽性細胞が striosome に出現するが,大脳新皮質にNFTが多数出現する後期では matrix においても多数のタウ陽性細胞が認められ,結果は仮説を裏付けるものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫組織学的検討は概ね結果が終了しつつあるが,生化学的検討に関しては,TPDの凍結脳の線条体,とくに側坐核の部分を有する症例が予想以上に少なく,Western Blotting解析によって,疾患に特異的なアイソフォームパターンを調べることが困難な状況である.今後も検索は継続する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き疾患患者の解析を継続して行い, データの蓄積に努める.生化学的な解析が実施困難な場合は.RD3やA4R等のタウのアイソフォームパターンを染め分ける抗体を用いて組織学的に検討し.成果をまとめることを考慮する.
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次年度使用額が生じた理由 |
既に実験機器や試薬が所属先の実験室に準備されており, 新たに購入する必要がなかった. さらに, TPD症例の凍結脳が少なく, 生化学的実験の実施が困難であったことからこれらの実験にあてる試薬等の購入をしなかったことが原因である.
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織学的手法を充実する必要があり, 新たに抗体や試薬等の購入費用にあてることを検討している.
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