研究課題
神経原線維変化型認知症(Tangle Predominant Dementia; TPD)は神経細胞内に蓄積したタウの形態や生化学的性質がADと類似しており、ADとTPDとでは海馬辺縁系におけるNFTの出現頻度が異なる。また、近年の我々の研究でTPDでは側坐核において高度なタウ蓄積が明らかにされ、側坐核のタウ蓄積が疾患後期に出現し、海馬・辺縁系型の入力に沿ってこれらの部位からの伝播によって生じたと仮説を立て、検証を行った。AD、TPD、正常高齢者の患者脳を用いて剖検時に採取した脳組織から、ホルマリン固定パラフィン標本、4%パラフォルムアルデヒド短時間固定凍結切片を作製し、海馬、辺縁系、大脳皮質、線条体(尾状核、被殻、側坐核)のタウ異常蓄積を各種抗体(抗タウ抗体、calbindin、tyrosine hydroxylase、Acetylcholinesterase等)を用いて免疫組織学的に解析をした。TPDの線条体におけるタウの異常蓄積は側坐核のstriosome に限局し、大脳新皮質からの入力が主体である matrix にはタウ陽性細胞は稀であった。一方、 ADでは病変の進展が軽い時期においてもstriosome 、matrixの両領域でタウ陽性像の出現を確認し、大脳新皮質にNFTが多数出現する後期では側坐核にとどまらず、尾状核においても高度にタウ陽性像を認めた。これらの結果は大まかにH27年度に確認し、H28年度はさらに症例を増やし、またAchEやタウ抗体の種類を増やし、蛍光二重染色で検証した。CalbindinやAchE抗体は、染色性は低いもののTHにおける結果と同様であった。近年、タウモデル動物の実験では、異常タウ蛋白は領域の近接性よりも神経線維連絡で繋がった領域に伝播することが報告されており、タウの伝播仮説を、実際の疾患脳の病変形成にも適用出来る研究成果が得られた。
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