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2015 年度 実施状況報告書

自閉症モデル霊長類を用いた発達期神経回路再編成の異常の検証

研究課題

研究課題/領域番号 15K19759
研究機関国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

研究代表者

佐々木 哲也  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 科研費研究員 (10634066)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード自閉症スペクトラム / 樹状突起スパイン / シナプス刈り込み / バルプロ酸 / マーモセット / 大脳皮質 / 領野 / マイクロアレイ
研究実績の概要

研究代表者等は、胎生期のマーモセットをバルプロ酸に曝露することにより、自閉症病態モデル霊長類の作出に取り組んでいる。これまでの行動学的解析からDSM-5を満たす自閉症様症状を示すことが明らかになってきている。
この病態モデル個体(VPA群)とバルプロ酸非暴露個体(UE群)の発達期大脳皮質の遺伝子発現解析を比較・解析を行った。先行研究と同じ6つの領野(area9, 12, 14r, 24, TE, V1)、5つの発達ステージ(新生仔、生後60, 90, 180日齢、成体)の遺伝子発現をマーモセット特異的DNAマイクロアレイを用いて調査した。VPA群では、新生仔で長距離神経結合形成に重要な分子の発現低下が認められた。生後60-180日齢で興奮性シナプスのマーカー遺伝子の発現量が上昇しており、この病態モデルでシナプス数が異常に増加していることが推定された。代謝型グルタミン酸受容体関連分子の発現変化も観察され、シナプス特性に異常が生じている可能性がある。また生後180日齢でミクログリアのマーカー分子の発現量が顕著に変動していることがわかった。
自閉症患者では頭周囲長が増加し、灰白質組織が厚くなっていることが報告されている。これは自閉症患者のシナプス刈り込み不全を反映しているものと考えられる。VPA群では、生後180日齢・成体で顕著な脳重量の増加が認められ、さらに灰白質が厚くなっており、本モデル動物の脳形態の特徴は自閉症患者の特徴と類似していることがあきらかになりつつある。VPA群では生後180日齢でミクログリアの突起が細くなり、密度が低下していた。これは、自閉症患者ではミクログリアの機能不全により不適切または活動が弱いシナプスを認識することができず、過剰なシナプスが維持されているという仮説を支持する結果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

胎生期バルプロ酸曝露マーモセットは自閉症脳の解剖学的特徴を反映すること、これを形成する遺伝子発現に変化が起きていることが示されつつあり、今後新たな自閉症病態モデル動物として治療法の開発に貢献することが期待できる。

今後の研究の推進方策

胎生期バルプロ酸曝露モデルマーモセットでは、生後60日齢(シナプス形成期)、90日齢(シナプス数ピーク期)、180日齢(シナプス刈り込み期)で興奮性シナプスのマーカー遺伝子の発現量が上昇しており、シナプス数が異常に増加していることが推定された。また脳重量の増加と灰白質の厚さの増加が観察された。今後は、樹状突起スパインの密度・総数を詳細に解析する予定である。また「シナプス刈り込み」によって除去される回路の実態について解析を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

樹状突起および樹状突起スパインの可視化実験に使用する定電流発生装置を貸与してもらうことができ、遺伝子発現解析ソフトウェアの年間ライセンス料を研究室内で共同で使用することができたため支出が減少した。

次年度使用額の使用計画

昨年度得られた胎生期バルプロ酸暴露マーモセット大脳皮質の遺伝子発現データの解析を重点的に行うため、遺伝子ネットワーク解析・パスウェイ解析ソフトウェアに関わる支出を見込んでいる。持ち越した研究費は今年度の研究費と合わせて、分子生物学実験試薬類、組織学的解析に係る試薬類の購入に充てる予定である。トレーサー類、in situ hybridization関連試薬、免疫組織化学関連試薬の出費を予定している。また国際学会および国内学会に参加し、成果発表や情報の収集に努めたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] in vivo two-photon imaging of dendritic spines in marmoset neocortex.2015

    • 著者名/発表者名
      Osamu Sadakane, Akiya Watakabe, Masanari Ohtsuka, Masafumi Takaji, Tetsuya Sasaki, Masatoshi Kasai, Tadashi Isa, Go Kato, Junichi Nabekura, Hiroaki Mizukami, Keiya Ozawa, Hiroshi Kawasaki, and Tetsuo Yamamori
    • 雑誌名

      eNeuro

      巻: 2(4) ページ: 1-10

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0019-15.2015.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Postnatal development of dendritic structure of layer III pyramidal neurons in the medial prefrontal cortex of marmoset.2015

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Sasaki, Hirosato Aoi, Tomofumi Oga, Ichiro Fujita, and Noritaka Ichinohe
    • 雑誌名

      Brain Structure and Function

      巻: 220(6) ページ: 3245-3258

    • DOI

      10.1007/s00429-014-0853-2.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 自閉症モデル霊長類の発達期大脳皮質シナプス再編成異常の検証2016

    • 著者名/発表者名
      佐々木哲也、中垣慶子、真鍋朋子、一戸紀孝
    • 学会等名
      第39回 日本神経科学大会
    • 発表場所
      横浜 (神奈川) パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-07-20 – 2016-07-22
  • [学会発表] 霊長類前頭連合野ニューロンの樹状突起スパイン形態の特異性2016

    • 著者名/発表者名
      佐々木哲也、山森哲雄、一戸紀孝
    • 学会等名
      日本解剖学会総会・全国学術集会 第121回大会
    • 発表場所
      郡山 (福島) ビックパレット福島
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-31
  • [学会発表] Postnatal development of dendritic structure of layer III pyramidal neurons in cerebral cortex of marmoset2015

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Sasaki, Tomofumi Oga, Hirosato Aoi, Ichiro Fujita, and Noritaka Ichinohe
    • 学会等名
      Society for Neuroscience Neuroscience 2015
    • 発表場所
      Chicago (U.S.A) McCormick Place
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-21
    • 国際学会
  • [学会発表] マーモセット大脳新皮質領野の錐体細胞樹状突起スパイン形態の多様性2015

    • 著者名/発表者名
      佐々木哲也、一戸紀孝、山森哲雄
    • 学会等名
      第38回 日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸 (兵庫) 神戸国際会議場・神戸国際展示場
    • 年月日
      2015-07-28 – 2015-07-31
  • [学会発表] マーモセット脳発達過程におけるシナプス形成へのミクログリアの関与2015

    • 著者名/発表者名
      佐柳友規、佐々木哲也、境和久、高坂新一、一戸紀孝
    • 学会等名
      第38回 日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸 (兵庫) 神戸国際会議場・神戸国際展示場
    • 年月日
      2015-07-28 – 2015-07-31
  • [備考] 脳科学で統合失調症に迫る NCNP ANNUAL REPORT 2014 -2015

    • URL

      http://www.ncnp.go.jp/general/pdf/nenpo20142015_9.pdf

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公開日: 2017-01-06  

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