研究実績の概要 |
時計遺伝子(Clock genes)は、およそ24時間周期で振幅発現する遺伝子であり、その機能により、24時間周期を示す生物活動を制御している。時計遺伝子DEC1およびDEC2は、Basic-helix-loop-helix(bHLH)型転写因子であり、時計中枢である視交叉上核のみならず、全身の組織および細胞で、概日リズムを形成している。また、免疫応答系や様々な組織分化の制御、癌化や低酸素応答、アポトーシス制御など、生体内における多彩な制御機能を担っている。 我々は、時計遺伝子発現が、ヒト扁平上皮癌細胞株のリンパ管新生(リンパ節転移)に及ぼす影響を検討した。3種の分化度の異なるヒト扁平上皮癌細胞株(TE5,TE10, TE11)のうち、ポドプラニン発現はTE11で強く、TE5では弱かった。一方、TE10ではポドプラニン発現は認められなかった。TE11におけるDEC1 overexpressionでは、ポドプラニン発現は促進された。逆に、TE11におけるDEC2 overexpressionではポドプラニン発現は抑制された。これらの結果から、DECはポドプラニン制御を介して、ヒト食道癌細胞株のリンパ管新生を制御していることが示された。
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