研究課題
時計遺伝子(Clock genes)は、およそ24時間周期で振幅発現する遺伝子であり、その機能により、24時間周期を示す生物活動を制御している。時計遺伝子DEC1およびDEC2は、Basic-helix-loop-helix(bHLH)型転写因子であり、時計中枢である視交叉上核のみならず、全身の組織および細胞で、概日リズムを形成している。また、免疫応答系や様々な組織分化の制御、癌化や低酸素応答、アポトーシス制御など、生体内における多彩な制御機能を担っている。我々はこれまでに、概日リズムを制御する時計遺伝子の機能解析を行ってきた。癌の増殖・進展には、癌細胞の代謝、癌細胞-間質相互作用・腫瘍血管新生などの様々な因子が関係する。本研究では、食道癌細胞において、時計遺伝子DECが糖代謝を制御しながら、癌の浸潤・増殖に関わっている機能を解析することを目的とする。前回我々は、3種の分化度の異なるヒト扁平上皮癌細胞株(TE5, TE10, TE11)を用いた実験で、DECがポドプラニン制御を介して、ヒト食道癌細胞株のリンパ管新生(リンパ節転移)を制御していることを明らかにした。今年度我々は、実地臨床の扁平上皮癌におけるFDG集積(FDG-PET検査, SUVmax)とリンパ節転移との関係について外科切除材料を用いた検討を行い、FDG集積(SUVmax)とリンパ節転移とに相関があることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
実地臨床の扁平上皮癌におけるFDG集積(FDG-PET検査, SUVmax)とリンパ節転移との関係についての検討を行い、FDG集積(SUVmax)とリンパ節転移とに相関があることを明らかにすることができた。
ヒト食道癌に焦点を絞り、細胞レベル・組織レベルで時計遺伝子の役割を明らかにする。①ヒト食道癌細胞における概日リズムを誘導し、食道癌の増殖・浸潤・代謝に関わる日内リズムの分子機構を解析する。②ヒト食道癌症例において、FDG PET/CTと外科切除材料についての検討を行い、糖代謝(特にFDG集積・GLUT1発現量など)・転移(特にポドプラニン発現・リンパ節転移など)とDEC発現の関連に着目しつつ、DECのヒト食道癌における臨床的意義を検討する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件)
Int J Mol Med. 2016 Dec;38(6):1727-1733.
巻: 38(6) ページ: 1727-1733
10.3892/ijmm.2016.2798.
Oncol Rep.
巻: 36(6) ページ: 3154-3160
10.3892/or.2016.5202.
J Radiat Res.
巻: 57(5) ページ: 533-540
Hepatol Res.
巻: 46(5) ページ: 468-476
10.1111/hepr.12579.