早期肺癌において、手術に代わる治療方法として体幹部定位放射線治療がある。肺癌、特に下葉肺癌は呼吸による腫瘍の位置移動が問題となる。近年は粒子線治療などの新たな治療機器の台頭が見られるがコスト面からもX線を用いた治療の意義は大きい。 本研究では、腫瘍の位置をリアルタイムで患者自身が視認し、意識的に腫瘍呼吸移動をコントロールする方法を構築することを目標としている。 今年度は、昨年度に開発したビデオウェア(wrap1200VR)を用いた透視画像の腫瘍位置を患者に見せることができるシステムの改良を行った。透視画像の腫瘍位置を患者自身がより把握しやすいように腫瘍の位置にマーキングする方法を実装した。具体的には呼吸性移動による腫瘍の移動を正確に画像から認識するため、人工知能(深層学習)を用いてリアルタイムに腫瘍の位置を把握し、その腫瘍の位置にマーキングする手法を検討し、その手法を用いて実装した。腫瘍位置をより正確に捉えるために画像処理技術を用いた。ただ、透視画像上には腫瘍に加えて他の臓器が存在する。特に、肋骨の画像強度が腫瘍の画像強度と類似であるため、適切に腫瘍の位置をマーキングすることができなかった場合もあった。ただ、腫瘍位置を患者が把握するためのマーキングとしては十分使用できる可能性を見出すことができた。 また、透視画像を表示させるためのタイムラグが生じてしまうことも確認でき、今後は画像処理の高速化および通信時間の短縮を行い、臨床利用を目指す。
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