タウイメージングトレーサーの比較研究

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K19767
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 原田 龍一 東北大学, 加齢医学研究所, 特別研究員(PD) (60735455)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 放射性医薬品・造影剤 / イメージング / 神経変性疾患 / 神経機能画像学

研究実績の概要

アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の脳内に蓄積するタウ病変を標的としたPETイメージングトレーサーが複数開発され、現在探索的臨床研究によりその有用性が検証されている。しかし、トレーサーが認識するタウ病変や生体内における薬物動態など各トレーサーの全容は明らかになっていない。そこで、本研究では申請者らが開発したキノリン誘導体を含む化学構造が異なる複数のタウイメージングトレーサーの結合特性、薬物動態特性を比較しそれらの特徴・性能を明らかにすることを目的とした。平成27年度は、視覚的読影および感度を高めるために18F-THK5117の欠点である白質への高い結合を減らすことを目的として新たに18F-THK5351を開発した。18F-THK5351の結合特性および薬物動態特性を18F-THK5117と直接比較した。その結果、18F-THK5351は18F-THK5117よりもタウ病変を含むAD脳ホモジネートに対して高い結合親和性を有し、白質への結合が可逆的で解離が速いことがわかった。３H-THK5351のミクロオートラジオグラフィーによりADのタウ病変への選択的な結合が確認できた。さらに、THK5351はTHK5117同様、皮質基底核変性症や進行性核状性麻痺の脳内に蓄積するグリアタウ病変の一部への結合を認めた。正常マウスにおける薬物動態も18F-THK5117と比較して速かった。以上のことから、18F-THK5351は18F-THK5117よりも優れたタウイメージングトレーサーであると考えられた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、結合特性および薬物動態特性を比較することにより、新たに開発した18F-THK5351が従来の18F-THK5117よりも優れた特性を有することを示すことができた。また当初の計画通り、本年度構築した評価法で同様に化学構造が異なる複数のタウイメージングトレーサーを比較することができるため。

今後の研究の推進方策

①18F-THK5351の代謝特性の詳細を明らかにする。
②当初の計画通り、異なる化学構造の18F-FDDNP, 18F-AV1451, 11C-PBB3などの様々なタウ病変への結合特性、薬物動態特性を検討する。

次年度使用額が生じた理由

non-ADタウオパチーなどの脳標本を米国から入手するのに時間がかかったため、それを用いた実験を十分に行うことができなかった。また、サイクロトロンが電気代の高騰により使用が制限されているため十分な回数の実験が行えなかったため。

次年度使用額の使用計画

脳標本を入手し、各トレーサーを評価するための評価系(様々な疾患の脳標本を用いたオートラジオグラフィー、薬物動態評価、代謝解析）の構築が前年度にできたので、今年度は化学構造が異なるタウイメージングトレーサーの検討を進める。
主に、組織化学実験、放射性同位元素関連実験の消耗品に使用する。次年度は最終年度なので積極的に学会発表、海外専門誌への投稿をしていく予定である。このための旅費、学会参加費、論文校正費用、印刷費として使用する。

研究成果

• [雑誌論文] microPET Imaging of Tau pathology with [18F]THK-5117 in two Transgenic Mouse Models (2016)
  • 著者名/発表者名: Matthias Brendel, Anna Jaworska, Federico Probst, Felix Overhoff, Viktoria Korzhova, Simon Lindnerm Janette Carlsen, Peter Bartenstein, Ryuichi Harada, Yukitsuka Kudo, Christian Haass, Fred van Leuven, Nobuyuki Okamura, Jochen Herms, and Axel Rominger
  • 雑誌名: Journal of Nuclear Medicine 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.296/jnumed.115.163493.
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Advances in the development of tau PET radiotracers and their clinical applications (2016)
  • 著者名/発表者名: Nobuyuki Okamura, Ryuichi Harada, Katsutoshi Furukawa, Shozo Furumoto, Tetsuro Tago, Kazuhiko Yanai, Hiroyuki Arai, Yukitsuka Kudo
  • 雑誌名: Ageing Research Reviews 巻: 印刷中 ページ: 印刷中
  • DOI: 10.1016/j.arr.2015.12.010.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Characteristics of Tau and Its Ligands in PET Imaging (2016)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Nobuyuki Okamura, Shozo Furumoto, Tetsuro Tago, Kazuhiko Yanai, Hiroyuki Arai, Yukitsuka Kudo
  • 雑誌名: Biomolecules 巻: 6 ページ: 1-15
  • DOI: 10.3390/biom6010007.
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Synthesis and characterization of 18F-interleukin-8 using a cell-free translation system and 18F-fluoro-L-proline, Journal of Nuclear Medicine (2016)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Shozo Furumoto, Takeo Yoshikawa, Yoichi Ishikawa, Katsutoshi Shibuya, Nobuyuki Okamura, Kiichi Ishiwata, Ren Iwata, Kazuhiko Yanai
  • 雑誌名: Journal of Nuclear Medicine 巻: 57(4) ページ: 634-639
  • DOI: 10.2967/jnumed.115.162602.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Structure-Activity Relationship of 2-Arylquinolines as PET Imaging Tracers for Tau Pathology in Alzheimer’s Disease (2016)
  • 著者名/発表者名: Tetsuro Tago, Shozo Furumoto, Nobuyuki Okamura, Ryuichi Harada, Hajime Adachi, Yoichi Ishikawa, Kazuhiko Yanai, Ren Iwata, and Yukitsuka Kudo
  • 雑誌名: Journal of Nuclear Medicine 巻: 57(4) ページ: 608-614
  • DOI: 10.2967/jnumed.115.166652.
  • 査読あり
• [雑誌論文] 18F-THK5351: A Novel PET Radiotracer for Imaging Neurofibrillary Pathology in Alzheimer’s Disease (2016)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Nobuyuki Okamura, Shozo Furumoto, Furukawa Katsutoshi, Aiko Ishiki, Tomita Naoki, Tetsuro Tago, Kotaro Hiraoka, Shoichi Watanuki, Mihi Shidahara, Masayasu Miyake, Yoichi Ishikawa, Rin Matsuda, Akie Inami, Takeo Yoshikawa, Yoshihito Funaki, Ren Iwata, Manabu Tashiro, K Yanai, H Arai, Y Kudo.
  • 雑誌名: Journal of Nuclear Medicine 巻: 57(2) ページ: 208-214
  • DOI: 10.2967/jnumed.115.164848.
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Preclinical Evaluation of [18F]THK-5105 Enantiomers: Effects of Chirality on its Effectiveness as a Tau Imaging Radiotracers (2016)
  • 著者名/発表者名: Tetsuro Tago, Shozo Furumoto, Nobuyuki Okamura, Ryuichi Harada, Hajime Adachi, Yoichi Ishikawa, Kazuhiko Yanai, Ren Iwata, and Yukitsuka Kudo
  • 雑誌名: Molecular Imaging and Biology 巻: 18(2) ページ: 258-266
  • DOI: 10.1007/s11307-015-0879-8.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Longitudinal Assessment of Tau Pathology in Patients with Alzheimer’s Disease Using [18F]THK-5117 Positron Emission Tomography (2015)
  • 著者名/発表者名: Aiko Ishiki, Nobuyuki Okamura, Katsutoshi Furukawa, Shozo Furumoto, Ryuichi Harada, Naoki Tomita, Kotaro Hiraoka, Shoichi Watanuki, Yoichi Ishikawa, Tetsuro Tago, Yoshihito Funaki, Ren Iwata, Manabu Tashiro, Kazuhiko Yanai, Yukitsuka Kudo, Hiroyuki Arai
  • 雑誌名: PLos One 巻: 10(10) ページ: 1-9
  • DOI: 10.1371
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [学会発表] Metabolite analysis of tau PET tracer [18F]THK-5351 (2016)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Nobuyuki Okamura, Shozo Furumoto, Tetsuro Tago, Katsutoshi Furukawa, Aiko Ishiki, Ren Iwata, Manabu Tashiro, Hiroyuki Arai, Kazuhiko Yanai, Yukitsuka Kudo
  • 学会等名: Human Amyloid Imaging Conference 2016
  • 発表場所: Miami, USA
  • 年月日: 2016-01-14
  • 国際学会
• [学会発表] タウイメージングトレーサーの[18F]THK-5351の代謝解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 原田龍一、岡村信行、古本祥三、多胡哲郎、岩田錬、谷内一彦、工藤幸司
  • 学会等名: 第55回日本核医学会学術総会
  • 発表場所: ハイアットリージェンシー東京（東京都・新宿区）
  • 年月日: 2015-11-05
• [学会発表] タウPETプローブ[18F]THK-5351の結合特性の解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 原田龍一、岡村信行、古本祥三、古川勝敏、石木愛子、岩田錬、谷内一彦、荒井啓行、工藤幸司
  • 学会等名: 第34回日本認知症学会
  • 発表場所: リンクステーション青森（青森県・青森市）
  • 年月日: 2015-10-04
• [学会発表] Validation of the binding specificity of tau PET tracer [18F]THK-5351 on postmortem human brain samples (2015)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Nobuyuki Okamura, Shozo Furumoto, Aiko Ishiki, Katsutoshi Furukawa, Tomita Naoki, Tetsuro Tago, Ren Iwata, Kazuhiko Yanai, Hiroyuki Arai, Yukitsuka Kudo
  • 学会等名: AAIC2015
  • 発表場所: Washington D.C., USA
  • 年月日: 2015-07-22
  • 国際学会
• [学会発表] Characterization of [18F]THK-5351 for imaging of tau pathology in Alzheimer's disease (2015)
  • 著者名/発表者名: Ryuichi Harada, Nobuyuki Okamura, Shozo Furumoto, Testuro Tago, Ren Iwata, Kazuhiko Yanai, Hiroyuki Arai, Yukitsuka Kudo
  • 学会等名: 第10回日本分子イメージング学会
  • 発表場所: タワーホール船堀（東京都･江戸川区）
  • 年月日: 2015-05-18
• [産業財産権] MONOAMINE OXIDASE B BINDERS (2015)
  • 発明者名: 古本祥三、岡村信行、工藤幸司、原田龍一
  • 権利者名: 古本祥三、岡村信行、工藤幸司、原田龍一
  • 産業財産権種類: 特許
  • 産業財産権番号: P20150301
  • 出願年月日: 2015-12-18
  • 外国