研究課題
重粒子線治療(炭素イオン線治療)は従来のX線治療に比べ、新たな癌治療として注目されている。線量集中性が高いことからX 線治療に比べ正常組織に広範囲の有害事象が生じにくいが、頭頸部腫瘍に対する重粒子線治療は口腔領域に近接するため限局した口腔粘膜炎が発症する。本研究は口腔粘膜炎に着目し、発症と照射線量との関係を解明することを目的とした。具体的な目的は、①頭頸部炭素イオン線治療時の口腔粘膜炎の発症部位・程度・時期を予測すること、②予防可能な粘膜炎の存在の有無や、照射線量以外の口腔粘膜炎のリスク因子を明らかにし、③その機序等から、重粒子線治療時の更なるQOL維持の提案を行うものである。口腔粘膜の表面線量をMIM Maestro ver.6.0.2(MIM Software Inc.USA) を利用し3次元的にモデル化し、粘膜炎発症部位と口腔粘膜表面線量モデルを比較検討した。結果、高線量域は一致し、Grade2(RTOG)以上の口腔粘膜炎は、口蓋は43.0Gy(RBE)以上、舌では54.3Gy(RBE)以上で有意差をもって発症するという結果を得た。尚、上記結果は国際雑誌に掲載されている。現在は口腔粘膜表面線量モデルにて口腔粘膜炎の発症線量や部位・程度が予想できるようになったので、重粒子線治療開始前に本モデルを患者や医療従事者(特に看護師や歯科衛生士)への情報提供に使用している。具体的には患者個々にパンフレット等を配布し、その際に自身の口腔粘膜表面線量モデルを提示し、説明している。本モデルを使用した患者のQOL 評価やアンケートについても施行し、可能な範囲で患者満足度を確認することを検討している。また、看護師や歯科衛生士についても、アンケートを施行し、本モデルの看護やケア等への有用性について検討する。本モデルが重粒子線治療にて運用することが現実的であったので、可動施設が重粒子線治療よりも限定的ではない高精度放射線治療法の定位照射法や強度変調放射線治療にも応用中である。
1: 当初の計画以上に進展している
口腔粘膜表面線量モデルによる評価の論文が受理され、その論文を基に継続して研究を続けている。本モデル使用の有無でのQOLの推移やX線治療にも応用しており、当初の計画以上に進展している。
口腔粘膜表面線量モデルにて口腔粘膜炎の発症線量や部位・程度が予想できるようになったので、重粒子線治療開始前に本モデルを患者や医療従事者(特に看護師や歯科衛生士)への情報提供に使用している。具体的には患者個々にパンフレット等を配布し、その際に自身の口腔粘膜表面線量モデルを提示し、説明を行う。治療前に口腔粘膜炎発現の部位や程度を知ることができることで、治療中の口腔内のセルフケアや食事内容などに注意を払うことが可能であると予想される。本モデルを使用した患者のQOL 評価やアンケートについても施行し、可能な範囲で患者満足度を確認することを検討している。また、看護師や歯科衛生士についても、アンケートを施行し、本モデルの看護やケア等への有用性について検討する。本モデルが重粒子線治療にて運用することが現実的であったので、可動施設が重粒子線治療よりも限定的ではない高精度放射線治療法の定位照射法や強度変調放射線治療にも応用していく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Anti Cancer Research
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