肺癌は本邦、海外ともに死因の第一位を占める難治性の疾患である。肺がんの治療における放射線治療の重要性は認識されているが、未だに良好な治療成績とは言えない。重粒子治療は通常の放射線治療に用いるX線と比較して、線量集中性が高く、X線に抵抗性な腫瘍にも効果があることが報告されている。局所進行性肺癌に対しての通常治療は化学療法とX線を併用するが、重粒子線治療と化学療法の併用の報告はまだない。 この研究では、重粒子線治療と化学療法の併用を基礎的なアプローチと臨床的なアプローチの2つの側面から行っている。基礎的なアプローチとしては、肺癌の細胞株を用いて、重粒子線と抗癌剤の増感作用を調べている。具体的には細胞株と薬剤ごとにIC50を求め、このIC50を用いて、コロニーアッセイ法を施行した。これまでの結果としては、カルボプラチンとパクリタキセルにおいてはX線とほぼ同等か、やや低い程度の増感作用があることを確認している。臨床的なアプローチとしては、局所進行肺癌に対するX線と重粒子線の線量分布の違いについて研究をした。当院で実際にX線の治療を行った局所進行肺癌の症例の画像を用いて、仮想的に重粒子線治療のプランを作成し、線質による違いを比較検討した。重粒子線治療はX線と比較して、腫瘍に対する線量の集中性が高い一方、周囲への臓器への線量が低いことを確認することができ、論文として発表した。また、化学療法と重粒子線治療を併用する前段階の試験として、重粒子線治療単独の局所進行肺癌に対する臨床試験を施行し、本学より論文としてまとめた。
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