肺の腫瘍に対する放射線治療においては、腫瘍の呼吸性移動を把握し、十分なマージンをとって放射線治療を行うことが必要である。近年、CT機器の進歩に伴い、空間的3次元情報と時間軸を併せた4次元の4D-CT撮影が可能となった。肺腫瘍へ放射線治療を行う際には、4D-CTで腫瘍の動きを把握し、それを元に放射線治療計画を作成している。しかし、4D-CT撮影には被ばくが多いのが欠点である。一方で、被ばくのないMRIを用いた4次元データを構築する研究も進められている。当施設でも、2次元時系列MRI画像に交差プロファイル法と呼ばれる手法を用いて胸部4D-MRIを再構成する方法を開発している 。本研究では、肺悪性腫瘍患者の4D-MRIを撮像し、肺腫瘍の呼吸性移動を把握し、MRIから得られた腫瘍の呼吸性動態に、呼気および吸気の1断面でのみ得られるCT画像に組み合わせて4D-CT像を仮想的に作成し、放射線治療計画に利用可能であることを示すことを目的とした。 研究期間中に、7例の肺悪性腫瘍患者に対し、放射線治療前に4D-MRIと4D-CTを撮像した。4D-MRIおよびCTにより、呼吸による胸郭の動きや肺腫瘍の動きが確認できた。ただ、一部の症例では腫瘍のサイズが小さく、MRIで腫瘍の動きの範囲の詳細な同定が困難であった。MRIとCTとの融合については、CTとMRIの撮影体位の違いも大きく、剛体の解析方法が不十分であった。そのため、研究期間内には仮想4D-CTのプログラムが開発は実現できなかった。今後はMRIの撮像条件のさらなる検討が必要と考えられる。また、CTとMRIの融合、さらに仮想4D-CTのプログラムの開発にさらに取り組み、研究成果の実用化を目指す予定である。
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