本研究における研究代表者の所属する講座の研究グループが開発したMRI撮像法であるheavily T2強調3D-FLAIR法は、特定の脳白質線維の連続性・信号強度を高コントラストかつ高分解能の画像で観察することが可能である。しかし、heavily T2強調 3D-FLAIR法を用いた脳白質線維の描出の特徴はいまだ明らかにされていない点が多い。本研究はheavily T2強調3D-FLAIR法を用いた脳白質線維の描出についての新規知見を明らかにすることを目的とした。 初年度には研究の土台となるMRI撮像におけるパラメータの決定を行うことができた。 また、この撮像法では白質線維の描出のほか、ガドリニウム造影剤を利用することにより脳内代謝産物の排泄の機序であるglymphatic systemの評価にも有用であることが示されたため、次年度では撮像パラメータを調整したheavily T2強調 3D-FLAIR法を利用してガドリニウム造影剤の投与前から6時間後まで複数回の撮像を行うことにより、静脈内に注入された造影剤が脳室周囲器官の一つである、OVLT(終板脈管器官)の前方を経て脳脊髄液へ排泄されることを示すことができた。 それに加えて、この撮像方法では内耳器官における内リンパ水腫の評価にも有用であることが示されており、ガドリニウム造影剤の静脈内への注入4時間後に撮像することにより前庭内の水腫はメニエール病に特異的である一方で、蝸牛内の水腫はメニエール病以外の正常コントロールでも時としてみられることが確認された。
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