乳房温存手術後の短期部分照射の方法の一つに術中照射法がある。申請者の施設では、日本で最初に乳房温存手術後の術中照射を行い、すでに、5年異常が経過し、現在、局所再発もなく、その成績は良好である。しかし、高線量投与による肺や心臓などの正常組織の障害を防ぐため、腫瘍床背側に厚みのある、大きな遮蔽プレート(アクリルー銅性)を挿入する必要があり、その結果、皮膚の切開創が大きく、乳房の整容性が低下する問題があった。本研究の目的は、タングステン機能紙と造影剤を用いた柔軟で自由度の高い素材による遮蔽プレートを試作し、皮膚の小切開創から挿入可能かつ、現行のプレートと同等の遮蔽率を有するプレートを作成するための基礎的検証を行うことにある。H27年度はタングステン機能紙の遮蔽効率についての検証結果を米国物理学会で報告した。H28年度は乳房術中照射に頻用される電子線エネルギー9、12MVを遮蔽するために必要な造影剤の厚みをヨード含有量の異なる造影剤数種類で検証し、9MV電子戦であればCT用ヨード造影剤を用いることで、遮蔽が可能である可能性が示唆される結果を日本放射線腫瘍学会で報告した。H29年度は更に、ヨード造影剤を用いた検証と乳房再建術で用いるエキスパンダーの利用についても検証を行い、FARO(Federation of Asian Radiation Oncology)にて発表し、best oral presentationを受賞した。
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