乳房温存手術後の短期部分照射の方法の一つに術中照射法がある。申請者の施設では、日本で最初に乳房温存手術後の術中照射を行い、10年近く経過している。術中照射では、高線量投与による肺や心臓などの正常組織の障害を防ぐために、腫瘍床背側に厚みのある大きな遮蔽プレート(アクリルー銅性)を挿入する必要がある。同遮蔽プレートの挿入のために、皮膚に大きな切開を加える必要があり、乳房の整容性が低下する問題があった。本研究では、同等の遮蔽効率を有するが、小さな切開創で挿入可能な遮蔽プレートの開発を目指すものである。H27年度はタングステン機能紙の遮蔽効率についての検証を行い、同成果を米国物理学会で報告した。H28年度は乳房術中照射に頻用される電子線エネルギー9、12MVを遮蔽するために必要な造影剤の厚みをヨード含有量の異なる造影剤数種類で検証し、9MV電子線であればCT用ヨード造影剤を用いることで遮蔽が可能である可能性が示唆される結果を日本放射線腫瘍学会で報告した。H29年度はさらに、ヨード造影剤を用いた検証と乳房再建術で用いるエキスパンダーの利用についても検証を行い、FARO(Federation of Asian Radiation Oncology)にて発表し、best oral presentationを受賞した。H30年度は成果の取りまとめを行っていたが、論文化には至っておらず、引き続き、取りまとめを継続する予定である。
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