研究課題/領域番号 |
15K19785
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕之 京都大学, ウイルス研究所, 助教 (40710786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | βセクレターゼ / イメージング / アルツハイマー病 / PET/SPECT |
研究実績の概要 |
脳内におけるβ-アミロイドペプチド(Aβ)の産生および凝集は,アルツハイマー病(AD)の診断・治療において重要な標的となっている.なかでもβセクレターゼ(BACE)はAβ産生の最上流に位置すると考えられるため,BACEの酵素活性を生体内でイメージングできればADの早期診断のみならずその治療薬開発においても有用であると考えられるが,その手法は未だ確立されていない.そこで本研究では,BACEによって切断された後脳内に滞留する代謝補足の概念に基づいた新たな放射性プローブの開発を行うこととした.BACE活性によって切断される配列 (SCP)および,SCPに脳移行性が報告されている膜透過ペプチドを導入したPSCPを設計した.さらに,N-(m-[125I]iodophenyl)maleimide(125I-IPM)を導入した[125I]SCPおよび[125I]PSCPを合成し,そのBACE活性を標的とした新規放射性プローブとしての基礎的性質に関しての評価を行った. その結果,[125I]SCPおよび[125I]PSCPを放射性化学純度99%以上で得た.HPLCを用いたBACE活性による切断割合の検討において, [125I]SCPおよび[125I]PSCPはBACE非存在下において安定に存在した一方, BACE存在下において[125I]SCPおよび[125I]PSCPのピークは経時的に減少し,新たなピークの出現を認めた.これより,[125I]SCPおよび[125I]PSCPがインビトロにおいてBACEによって切断されることが示唆された.正常マウスを用いた体内放射能分布実験において,[125I]SCPは顕著な脳移行性を示さなかった.一方で,[125I]PSCP は、[125I]SCP に比べ高い脳移行性を示し,penetratinの導入による脳内挙動の改善が示唆された. 以上の結果より、 [125I]SCPおよび[125I]PSCPがBACE活性を標的とした新規放射性ヨウ素標識プローブとしての基礎的性質を有することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初から、使用する核種の変更は行ったが、当初予定していた新規プローブの合成および標識、インビトロにおける評価、さらには正常マウスを用いた体内分布評価を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では脳移行性が不十分であることから、膜透過ペプチドの部分のみの変更を行った新たなプローブを設計・合成し、評価をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用核種を変更したこと、およびコンセプトの証明を第一としたためプローブ開発の数を最小限に抑えたことから次年度への繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は新規プローブの合成を中心に使用する予定であり、それ以外は当初の計画に従って使用する。
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