研究実績の概要 |
今年度は脳循環代謝におけるアストロサイトの役割について、検討を行った。フルオロクエン酸(FC)はアストロサイトのTCAサイクルのinhibitorであり、脳内に注入することで、アストロサイトの代謝を止めることができる。今回、ラットのFC脳内注入モデルを用いて、O-15ガスによる脳循環代謝測定、ならびにC-14 Acetateオートラジオグラフィー(ARG)を用いて、アストロサイトの代謝評価を行った。その結果、FC注入によっても脳内の脳血流量、脳酸素消費量は維持されることが明らかになった。FC注入側と対側の定量値はそれぞれ、CBF (54.4 ± 8.8 and 55.3 ± 11.6 ml/100ml/min), CMRO2 (7.0 ± 0.9 and 7.1 ± 1.2 ml/100ml/min), OEF (72.0 ± 8.9 and 70.8 ± 8.2 %), and CBV (4.1 ± 0.8 and 4.2 ± 0.9 ml/100ml)であり、統計学的な有意差を認めなかった。ニューロンがアストロサイトの代謝低下を代償している可能性が示唆された。一方、C-14 Acetate ARGではFC注入部位の集積低下を認めており、アストロサイトの代謝が低下していることが確認された。以上の結果より、アストロサイトの代謝障害時においても局所脳血流量ならびに脳酸素消費量は維持されていることが明らかになった。
|